オートリブの普及は本当にエコに貢献するか?
オートリブの利用が一般化すれば、大気汚染の元になる2万2500台のガソリン車のマイカーがお払い箱になる、という試算がある。ところで、公共の交通機関が発達し、おまけに駐車場代の高いパリで、マイカーを所有しているのはどんな人だろう?車好きと呼ばれる人種、地下鉄なんかに乗りたがらないハイソな人々……いずれもオートリブが普及しても車を手放さないだろう。また、郊外からマイカー通勤する人は、パリ市内しか利用できないオートリブは、使えない。となると、車は週末の買い物や夜の外出に使う程度、という人が、駐車場代、保険料などなど車の維持費を計算し、オートリブ派になる可能性も。あとはステーションが自宅近くにあるかどうかがポイント。ただ、いざ使いたい時にステーションには車が一台もない、という事態も起こりうるが。
また、「ベリブで、自転車のよさが分かり、マイ自転車を買った人がいるように、オートリブを試して、マイカーをEVに買い替える人も出る」なんて声もある。しかし、フランスは発電の75%を原子力に頼る原発大国で、サルコジ大統領は次世代原子炉開発にも積極的。EVが普及すれば、ますます原子力発電への依存度が高くなると思われる。フランスは地震がほとんどない国ではあるが、9月には死傷者を出す原発事故も起きたし、原発がテロの標的になる可能性も。3・11以来、どうもEV=エコとは安易に捉えられない。このオートリブ、本当にエコに貢献するのかどうかは、本格始動してからの結果待ちというところか。
江草由香