「クラッシュ・ギャルズ」という名を覚えているだろうか。アイドルと化した女子プロレスラー2人、長与千種さんとライオネス飛鳥さんのコンビだ。一時代を築いた「クラッシュ・ギャルズ」の大ブームはなぜ起きたのか、また、それからの25年はどうだったのかを、文藝春秋社から2011年9月13日に発売された新刊本『1985年のクラッシュ・ギャルズ』(著・柳澤健)は明らかにしている。
女性プロレス記者の「衝撃告白」
著者の柳澤氏は、大学卒業後、空調機メーカーに就職し、のちに文藝春秋社に中途入社。2003年に退社後はフリーライターとして活動し、2007年発売のデビュー作『1976年のアントニオ猪木』(文藝春秋社)は特に高評価を得た。そんな柳澤氏は、今回の新刊執筆にあたるなかで、1人の女性と出会うことになる。当時、クラッシュ・ギャルズに心を奪われ、結婚も捨て、プロレス記者となって2人を追い続けた人物だ。
本書の試合開始のゴング(第1章)は、くだんの女性の「衝撃告白」から始まる。
1988・2・25川崎 その時、長与は・・・
華やかだった女子プロレス界だが、それは「若さ」を全面に打ち出した方針の上に成立していたと言えるかもしれない。当時の全日本女子プロレス(全女)は「25歳定年制」を敷いており、ジャッキー佐藤さんは23歳7か月で、また、ジャガー横田さんは24歳5か月で引退した。クラッシュ・ギャルズに訪れた「分裂」危機、フジテレビの「全日本女子プロレス中継」ゴールデンタイム撤退――。22歳になり、そろそろ「引退」の2文字が迫りくるなかでも、病気の両親を養うために頑張らねばならなかった長与さんにとって一生忘れられない試合が、1988年2月25日、川崎市体育館で行われたあの試合だった・・・。
80年代という時代を記す本としても楽しめる。
単行本、296ページ。定価1600円。