小泉文夫
『世界の民族音楽シリーズ 農村ジプシーの音楽 -GYPSY SONGS IN HUNGARIAN VILLAGES-』
発売1978年 レコード盤=廃盤
キングレコード
押入れを片付けていたら、レコード盤が150枚ほど出てきた。まさに「音盤」である。
残念ながら、レコードがあるなどとは思いもしなかったから、プレイヤーがすでにない。いずれ手に入れるにしても、押入れで逼塞していたレコードは、カビが生えたりもせず、みな一様に美しい盤面で、ちょっと誇らしい気分になった。
世界の民族音楽史研究者がまとめた
そのうちの10数枚は、世界の民族音楽史研究のパイオニアであり、第一人者であった小泉文夫先生監修の、全20枚に及ぶ『世界の民族音楽シリーズ』の一部だった。
1950年代、60年代、70年代と小泉先生が世界で集められた音の集大成。おそらくはもう既にこのシリーズも、この音源も陽の目をみることはないのだろう。
そう思ったら、なにか切ない気分に……。
ところがどっこい! レコードの発売元であるキングレコードは偉い! 小泉先生は1983年に亡くなっているのだが、その没後20年を経た2002年に『小泉文夫 没後20周年 メモリアル企画 小泉文夫の遺産~民族音楽の礎~』とタイトルした小泉先生のフィールドワークをCD70枚、DVD5枚組にして発売していたのだ。
音源となっているのは、キングのものだけでなく、ビクター、東宝、民音、ラジオ短波などのものが勢ぞろい。当時1000セット限定で1セット180,000円なり。総収録時間3523分! ビックリ魂消る。
レコードという磨耗するメディアの魅力
でもこの値段、このセット数だから、やはりもう手には入らないだろう。残念だが。どこかに存在しているのをご存知の方はお教え願いたい。
もちろんボクの押入れに逼塞していたレコードの音源も、この中にある。
聴けば聴くほど、小泉ワールドは凄さを増す。50年代から70年代にかけて、小泉文夫が世界を相手にしたフィールドワークは、もう二度と、誰もできない偉業といっていい。
今回、あえてレコードのシリーズジャケットをご紹介したい。取り上げるのは『農村ジプシーの音楽』。このシリーズの中で当時、一番聴いた音源なのだ。
きっとこのシリーズがお手元にある方もいることだろう。レコードという磨耗するメディアだが、大事に聴けば当然のように一生聴くことが出来る。ボクのレコードだって。
こちとらの時間ももう残り少ないが……。ただ、次の世代に伝えることは出来るはずだ。
なんだかレコードゆえに、そんなことがしたいとフッと思った。
加藤 普
【農村ジプシーの音楽 収録曲】・踊り歌
・抒情歌
など全24曲