【J-CAST独占インタビュー】
美人すぎる尼さんCDデビュー 「ありがとう」を歌で伝えたい

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三浦 明利
「ありがとう~私を包むすべてに~」
SOLO DEBUT MAXI SINGLE
OMCA-1143
1000円
7月6日発売
オーマガトキ


   奈良県吉野にある浄土真宗本願寺派の寺院、龍王山 光明寺住職、三浦明利(28)。明利は「あきとし」ではなく「あかり」と読む。本名であり、お気付きの通り女性住職。

   しかも妙齢のすこぶる美人。昨年の春にはフジテレビ系列のお昼の人気番組「笑っていいとも」で、ご本人の本意ではなかったかもしれないが「美人すぎる尼さん」と紹介され、知名度は一躍全国区になった。某化粧品メーカーのCMにまで起用され、こちらも話題になった――。最近、シングル曲「ありがとう」でCDデビューも果たしたが、彼女は何を思い、歌うのか。音楽へのアプローチの仕方など聞いた(聞き手:加藤 普)。

三浦 住職になったのは3年前ですが、高校時代には既に得度を受けていましたので、家の跡を継ぐ形で自然に……。

学生時代から実力派ミュージシャンだった

   女性が、しかもまだ年若い女性が寺の住職になるのはそうあることではない。そこには差し迫った理由があったのだろうが、それは「家庭の事情」ということで深くは詮索しない。

   それまでの明利住職は、学生として勉学に励む傍ら、女性だけのバンドを組みコンテストで優勝するほどの実力派ミュージシャンでもあった。ギターとヴォーカルを担当しバンドの中心メンバーだった。インディーズでCDを出し、メジャーデビューの話もあったが、青天の霹靂とでもいうか、住職にならざるを得なくなった。

   その彼女が今度、住職としての責務を果たしながら、再び音楽と真摯に向き合い、本格的なCDデビューとなったのだ。

   三浦 以前といまの音楽へのアプローチは、違います。以前はいかに格好良く見せるかとか、テクニック的にもできるだけ複雑で難しいものをとか。簡単にいえば、皆を驚かせたいという感じでした。それがいまはシンプルこそ最良。私が皆さんにお届けしたい心を表現するには、できるだけシンプルでありたいと。

仏教をベースにした宗教と音楽の融合

   確かに、デビュー曲「ありがとう」のシンプルさは特筆もの。一聴して、まるで「真言=マントラ」のようだと思った。浄土真宗でいえば「称名」とでもいうべきであろうか。

三浦 「ありがとう」は、これ以上シンプルにできない曲で、私にとってはチャレンジでもありました。

   不必要な部分をそぎ落としてそぎ落として生まれた曲。ここで歌われる「ありがとう」という言葉は、まさに「真言=マントラ」。そうした意味では、明利住職のこのアプローチは、希な「仏教をベースにした宗教と音楽の融合」という、最良の結果を生み出しているようにも思える。

   こうした音楽と宗教の関わりは、歌のうまいお坊さんが歌謡曲のCDを出すなんていうのはあったかもしれないが、これまで日本ではおよそ皆無だったのでないか――。

   たとえば、世界に目をやれば、宗教と音楽との密接な結びつきを感じさせる音楽は数多く存在する。ゴスペルもそうだし、教会音楽の原点「グレゴリオ聖歌」へのアプローチ、ことにキリスト教と音楽の関わりは深く広い。何年か前、「ザ・プリースツ」というイギリスの神父様3人組が鳴り物入りでデビューしたのを思い出した。

   また、仏教的なアプローチでは、チベット仏教の尼僧アニ・チョイン・ドルマは「マントラを唱える」CDを音楽として発表している。ドイツ出身でヒーリング・ミュージックのディーヴァ、デヴァ・プレマールはアルバムのほとんどをマントラで構成している……。

   それでも、宗教の現場・最前線にいる尼僧・僧侶、神父・牧師などが、宗教をベースにポピュラリティーのある音楽を披露するのは、かなり珍しい。明利住職の「ありがとう」は、明らかにそうした音楽の一つだろう。

人を大切にする心を音楽に

   この曲が生まれたのはずっと以前のことだったという。だが、同じ曲だが曲の理解、表現が大きく変化したという。その契機を、明利住職はこう言う。

三浦 住職になってから正直周りも見えないほどに突っ走ってきました。周りで支えてくださっている方々のことすら見えなかったり、自分の力だけでここまで来られたかのように錯覚したり。それが2年位前に、ふと立ち止まって周りを見ると、身近な家族、友人や御門徒の皆様はじめ、たくさんの人々が周りにいて。あぁ、皆さんのお蔭でこうやって毎日お勤めさせていただけているんだなと思った。当たり前のことなんですが、ようやくそのことに気付かせていただいたんです。その中で、音楽を続けさせていただけるご縁もいただいて、まず歌いたいと思ったのが、この『ありがとう』だったんですよ。

   そして、こう続ける。

三浦 この曲は、私自身が仏教の教えから気づかされたこと、教えていただいたことを歌っています。浄土真宗の経典である浄土三部経の大経の中に、たくさんの音楽に関する描写があります。光と音楽という2つのモチーフが何度も出てきます。金子大栄さんは『光と音楽は浄土の二大荘厳である』と言われています。そういう意味でも、私がポップスを媒介にして仏教の心を歌うことは、自然な流れかなとも思いますし、ようやく思いを声に乗せて歌うことができるようにもなってきました。

   2011年7月6日にCDが発売されたが、それは明利住職がすでに新しい一歩を踏み出したことと同義だ。信仰と音楽という、信仰者にとっては不可分の関係をさらに突き詰めていくことになるのだろうか?

三浦 これからもそういうスタンスで音楽と向き合っていきたいし、多くの方に心が届けばいいなと思います。仏教で大切にされている心、慈しみの心であり人を大切にする心を音楽に乗せて歌っていきたいと思っています。

   短い時間だったが、明利住職に話を伺い、音楽としての表現の発露はそもそもそういうものだったのではないかと思わされた。そして、こうした音楽が増えることは、世界を変える契機にもなるのではと、つくづく思った。

加藤 普

【収録曲】
1. ありがとう~私を包むすべてに~
2. 「花束レクイエム」
3. ありがとう~私を包むすべてに~(Instrumental)

◆加藤 普(かとう・あきら)プロフィール
1949年島根県生まれ。早稲田大学中退。フリーランスのライター・編集者として多くの出版物の創刊・制作に関わる。70~80年代の代表的音楽誌・ロッキンFの創刊メンバー&副編、編集長代行。現在、新星堂フリーペーパー・DROPSのチーフ・ライター&エディター。

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