人を大切にする心を音楽に
この曲が生まれたのはずっと以前のことだったという。だが、同じ曲だが曲の理解、表現が大きく変化したという。その契機を、明利住職はこう言う。
三浦 住職になってから正直周りも見えないほどに突っ走ってきました。周りで支えてくださっている方々のことすら見えなかったり、自分の力だけでここまで来られたかのように錯覚したり。それが2年位前に、ふと立ち止まって周りを見ると、身近な家族、友人や御門徒の皆様はじめ、たくさんの人々が周りにいて。あぁ、皆さんのお蔭でこうやって毎日お勤めさせていただけているんだなと思った。当たり前のことなんですが、ようやくそのことに気付かせていただいたんです。その中で、音楽を続けさせていただけるご縁もいただいて、まず歌いたいと思ったのが、この『ありがとう』だったんですよ。
そして、こう続ける。
三浦 この曲は、私自身が仏教の教えから気づかされたこと、教えていただいたことを歌っています。浄土真宗の経典である浄土三部経の大経の中に、たくさんの音楽に関する描写があります。光と音楽という2つのモチーフが何度も出てきます。金子大栄さんは『光と音楽は浄土の二大荘厳である』と言われています。そういう意味でも、私がポップスを媒介にして仏教の心を歌うことは、自然な流れかなとも思いますし、ようやく思いを声に乗せて歌うことができるようにもなってきました。
2011年7月6日にCDが発売されたが、それは明利住職がすでに新しい一歩を踏み出したことと同義だ。信仰と音楽という、信仰者にとっては不可分の関係をさらに突き詰めていくことになるのだろうか?
三浦 これからもそういうスタンスで音楽と向き合っていきたいし、多くの方に心が届けばいいなと思います。仏教で大切にされている心、慈しみの心であり人を大切にする心を音楽に乗せて歌っていきたいと思っています。
短い時間だったが、明利住職に話を伺い、音楽としての表現の発露はそもそもそういうものだったのではないかと思わされた。そして、こうした音楽が増えることは、世界を変える契機にもなるのではと、つくづく思った。
加藤 普
【収録曲】
1. ありがとう~私を包むすべてに~
2. 「花束レクイエム」
3. ありがとう~私を包むすべてに~(Instrumental)