荒れ狂う海を渡って、奈良時代の日本に戒律を伝えたとされる唐僧・鑑真。その鑑真が今からおよそ1200年前の759年に建立した寺院・唐招提寺(奈良市)では2011年7月1日から、スマートタブレットを利用した境内の音声ガイドを貸し出している。音声や動画を使ったガイドは、ふだん公開していない建物の中までガッチリ紹介してくれる。
国宝・鑑真和上坐像もくっきり
「唐招提寺スマートガイド」はTBSテレビとともに企画・製作したもので、位置情報やAR技術サービスなどを手がけるクウジット社(東京・港区)のAR(拡張現実感)技術を使ったアプリケーションを利用している。境内に8か所設置されているARマーカーに、貸し出されるタブレット端末「GALAXY Tab」をかざすだけで、音声と画像でのガイドがはじまる。ふだんは公開していない御影堂にある国宝・鑑真和上坐像も、画面を通じてキレイに映し出される。
美術館などではイヤホンで聞く音声ガイドが一般的だが、スマートタブレットを利用した音声ガイドとは珍しい。唐招提寺の担当者によると、音声ガイドの導入を検討する話し合いの場で、音声案内だけでなく、ふだんは公開していない建物の中も紹介したらどうか、静止画や動画で見せても面白そうだ、といったアイデアが続出した。メンテナンスが簡単なのと、貸出や返却がわかりやすいという点でも、スマートタブレットは使いやすく、導入に踏み切ったそうだ。
利用者の反響は「なかなか面白い」という若い人から、「操作がわかりにくい」という年配客まで。「始めたばかりなので利用者から使い勝手をどんどん聞きたい。新たなコンテンツも追加できたらと思います。また、将来的には持参したスマートフォンからでもアクセスできるようにしたい」と担当者は話している。
利用料は500円。以下の場所でガイドが聞ける。1.境内案内図(金堂解説)、2.講堂横(伽藍(がらん)解説)、3.境内案内図(句碑解説)、4.新宝蔵案内板(新宝蔵解説)、鑑真和上御廟案内板(御廟解説)、6.御影堂入口案内板(御影堂解説)、7.境内案内図(本坊解説)、8.境内案内図(戒壇解説)。