奇才画家「齋藤芽生」初の作品集 どう読み解くかは鑑賞者の腕次第

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『徒花図鑑』
『徒花図鑑』

   芸術新聞社が2011年7月5日に発売した画家・齋藤芽生氏の作品集『徒花図鑑』が話題を呼ぶ。

   齋藤氏は、東京藝大120年の歴史の中で油画科初となる女性教官(美術学部絵画科講師)となった人物だ。その作風は極めて独特で、展開される超現実的異彩の情景は、見る者の心に、ある種の「情念」を絡ませながら迫るものがあり、2010年には「VOCA展2010」で佳作賞と大原美術館賞を受賞している。

   『徒花図鑑』は、そんな齋藤氏の底知れない魅力を堪能できる初の作品集で、朽ちかけた物や打ちひしがれた人々など、息を潜めながらも確実に存在する「物語」を、花図鑑や祭壇、花輪といったフォーマットに落とし込んで構成。現代美術家の大竹伸朗氏は帯文で、「齋藤芽生の絵を視て、人工灯と粘膜の関係が浮かんだ。発光する気配、露光した余所者(よそもの)の記憶……闇風にひらつくアルミホイルの遠音」と評し、美術評論家の山下裕二氏は、「地霊から湧き出た徒花は、湿り気を帯びて画科の脳裏にこびりつく。齋藤芽生はその花弁を一枚ずつ剥(は)がして、絵に貼(は)り付けているのだ」と分析している。

   容易に「芸術」として位置づけるには"勇気"を必要とする希有な作品の数々。「あの世とこの世の境には、『その世』というのがあって、女は一人の時その世を彷徨(さまよ)い続けるのだ」(本文から)とのことばは、その恐怖感をさらに増幅させる。

   編集を担当した吉田宏子氏は、

「齋藤ファンには作品に添えられる言葉に惹かれる人が多くいます。そこで、絵を美しく構成することが通常の画集の基本ですが、画家の紡ぎ出す言葉を適宜配しました。絵の世界とともに味わっていただくことで、読者の方々がこの架空の博物誌のなかにより深く入り込んでいただけるのではないかと思います。文学好きな方にもぜひ手に取っていただきたい画集です」と話している。

   単行本、144ページ。定価3780円。

   ちなみに、齋藤芽生氏の個展『密愛村――「暗夜婚路」』が2011年8月6日まで東京・南青山のギャラリー・アートアンリミテッドで開かれている。

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