夏の電力不足で、日本は「節電列島」と化している。だが、電気を使わないのでは日常生活が成り立たず、健康にも影響が出る。
1日の中で最も節電が求められるのは「ピーク時」と言われる13~16時。この時間帯にいかに効果的な節電ができるかがポイントだ。節約アドバイザーの和田由貴氏は「無理をしないで楽しく」と、節電のコツを挙げる。
タイマー機能を利用して夜中に作業
電力需給のひっ迫は、早急には解決しそうもない。そこで各家庭では節電対策に取り組んでいるが、和田氏は「長続きさせるにはがんばりすぎず、苦にならない節電を習慣づけるのが大切」と話す。1日中ずっと節電し続けるのは難しい。むしろ「ピーク時」に集中的に電力を減らせる工夫を和田氏は勧める。
例えば、消費電力の大きい乾燥機や炊飯器はピーク時を避けて使用すればよい。ここではタイマー機能が効果を発揮する。洗濯物が朝に仕上がるように夜中に乾燥機にかけたり、朝方にご飯が炊けるようにタイマーを設定したりする。電力に余裕のある深夜の時間帯を利用すれば、電気代の節約にもつながるメリットがある。
エアコンや冷蔵庫は、昼間は設定温度に気を配る。エアコンの場合、1度上げるだけで電力量を10%減らせて効果的だ。夏本番ともなれば、夜間でも気温が30度前後の日も出てくるだろう。だがピーク時以外で電力が余っている時間に電気の使用を抑える必要はなく、エアコンを上手に使いながら体調維持に努めるのも大事だ。
「電気は便利につかってこそ、です。無理をしては続きません」と和田氏。待機電力を減らすため、部屋中のコンセントをすべて抜いて回るような努力は、手間がかかる割に実際は効果があまり期待できない。エアコンや冷蔵庫、照明器具といった家庭の消費電力の割合が高かったり、瞬間的に大きな電力がかかったりするものについて、ピーク時使用の工夫を心掛けることこそが賢い節電だと和田氏はいう。
快適な生活とエコは両立する
長期化が予想される電力不足を見据えて、家電を買い替えるのも一つの方法だ。購入の際の出費はあるものの、長い目で見れば「ランニングコストで回収できる」(和田氏)、つまり月々の電気代が安くなればトータルで節約につながるというわけだ。例えば最新の大型冷蔵庫の方が、10年前に買ったサイズの小さい冷蔵庫よりも消費電力量が少ないケースはよくあるという。
キッチンに「IH」を導入するのも一考だ。調理時に電気を使うことで、むしろ電力消費が大幅に増えるのではと思われるが、鍋やフライパンを熱する際の熱効率が高く、素早く調理できるのでエネルギーを無駄なく使えるのが特徴だ。夏場は、食事の支度で火を使い、部屋が暑くなって仕方なくエアコンの設定温度を下げるということもあるだろう。一方でIHの場合は、加熱の際も鍋などにだけ熱を伝えるために周りの空気を暖めることは少なく、結果的にエアコンの温度をそのままに使えて、設定温度を下げずにすむ。
これまでは、快適な生活を追求すると「ぜいたく」と見られ、エコを徹底すれば「我慢しなければ」という意識が働く傾向があり、快適性とエコはどちらかと言えば相反していた。だが「節電」を「しなければいけない」という義務感ではなく、時間帯をずらしたり新しい機器を導入したりして「楽しく、賢く」実践すれば、エコでありながら快適な生活を保てると和田氏は説明する。