決まり文句の人生応援歌いらない 心に潜む痛み、嘆き歌う美人歌手

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魂の奥深いところの痛みや嘆きを歌える才能

   「君」という言葉は、伊吹の歌には滅多に登場しない言葉。それがこの歌には、何度も出てくる。伊吹はこの実在の「君」に涙したにちがいない。

   だが、彼女にとってこんな話題は本位ではないだろう、最近のライヴで歌われる曲のタイトルをいくつか紹介したい。「トラジコメディー」「サジ投げ日和」「惚れ込め詐欺 2011」「欠乏不足」……ある種の言葉遊びがそこにある。実はここにこそ、伊吹留香というシンガー・ソングライターの真骨頂があるように思う。

   たしかに、「言葉遊び」ではあるが、どの曲でも実は遊びどころではない。この娑婆世界での真剣な彼女の在り様が歌われていて、その重さを、この「言葉遊び」はいくばくか、軽やかにしてくれているのだ。その作用を、彼女は決してギミックとしてではなく、ある意味、「本能」として知っている。

   今回、「伊吹留香」を取り上げているのは、誰も彼もが決まり文句の応援歌を歌っているようなこんな時代に、そんなことは考えもせず、魂の奥深いところの痛みや嘆きや、人生への揶揄を言葉にして歌ってしまう伊吹を、是非聴いて欲しいと心底思ったからなのだ。

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   7月10日(日)、「生を授かりし日に」と題したライヴがある。それもバンドで。サポートメンバーはGuitar:齋藤 亮、Bass:出井 孝幸、Drums:清川 渉。

   代官山の「晴れたら空に豆まいて」(TEL:03-5456-8880 住所:渋谷区代官山町20-20 モンシェリー代官山B2)というライヴハウスで行われる。入場料は、前売3,000、当日3,500(飲物別)。夕方6時半会場、7時開演。みんな、遅れずに集合な!

   タイトル通り、この日が伊吹留香の誕生日。繊細で、それでいて実にブルージーな彼女の歌声は一聴の価値あり。ご覧の通りに、美人でもある。前田敦子も良いだろうが、こんな魔性とでもいえそうな、まったく別の魅力をもったアーティストもいるのだと、知って欲しい。彼女の歌もまた、痺れるような歌なのだ。

   それなのに、今回は、紹介するCDがない。どうか、ライヴに足を運んで欲しい。

加藤 普

1949年島根県生まれ。早稲田大学中退。フリーランスのライター・編集者として多くの出版物の創刊・制作に関わる。70~80年代の代表的音楽誌・ロッキンFの創刊メンバー&副編、編集長代行。現在、新星堂フリーペーパー・DROPSのチーフ・ライター&エディター。
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