【J-CAST独占インタビュー】
言葉で表せない「すごい音」 波形編集が生み出す音楽世界

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広がり続ける冨田晃のフィールド

冨田 水滴の音というのは、ヒトラーが拷問に使ったといわれるように、それだけ聞いていると人間は耐えられなくなるんです。ある意味人間の本質を突く規則性と揺らぎをもっている。しかし水滴の音をいくつか重ねてあげると、今度は入ってくる音に変化するんです。高野昌昭の水琴竹のような、あんな音を創りたいとずっと思っていました。僕にとって音楽も美術もなんの境界もない、芸術と自然の境界も作らない。文化的なもの、自然そのものにも境界を作りたくない。

   そして、その思いは見事に結実しているように思える。

冨田 これが本物でしょ?」とリスナーはある完成形を求めてくるんですが、それを良い意味で裏切りながら……ただし裏切りすぎるとビジネスにもならない。ある程度は売れながらも、かといって期待にはあまり応える気はないという矛盾を抱えつつ、自分の仕事をこなしていくようですね。

   三味線。スティール・パン。ガムラン。サックス。グラスハープ。水琴竹。そして波形編集……冨田 晃のフィールドは広がり続けるようだ。冨田の次は?

冨田 今回はスティールパンとグラスハープを使ったのですが、今度は楽器を変えてみようかと考えてます。ガムラン系とか……。

   本当は、この何倍かの話をしている。ここでは今回のCDに特化した話を原稿化した。そうでなければ、誌面はどこまでもふくらみ続けるから。

   ちなみに、CDジャケットも冨田が「月の光」をテーマに撮りおろしした写真群が飾っている。

   最後に、一言。“すごい音”それだけはハッキリしている。

加藤 普

【月の光 ドビュッシー作品集 収録曲】
1. 月の光
2. 亜麻色の髪の乙女
3. パスピエ
4. 小さな黒人
5. レントより遅く
6. 月の光(ver.II)
7. 夢
8. ゴリウォーグのケーク・ウォーク
9. 雪は踊っている
10. シランクス
11. 二つのアラベスク第1番

◆加藤 普(かとう・あきら)プロフィール
1949年島根県生まれ。早稲田大学中退。フリーランスのライター・編集者として多くの出版物の創刊・制作に関わる。70~80年代の代表的音楽誌・ロッキンFの創刊メンバー&副編、編集長代行。現在、新星堂フリーペーパー・DROPSのチーフ・ライター&エディター。

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