【J-CAST独占インタビュー】
言葉で表せない「すごい音」 波形編集が生み出す音楽世界

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「音のばらつきや音色の違いも入れてしまおう」

冨田 僕のこだわりの部分でもあり、コンピュータ・ミュージックが低迷している理由でもあると思いますが、いまの電子音楽のMIDI音源は、ある音をサンプリングしその音をベースに他の音を作るわけで、まあクローンみたいに違いがほとんどないわけです。その上音量にしても音のタイミングにしても、結局楽譜にしたら譜割りどおりにどこかに入れ込むじゃないですか。

 僕が求めるのは、人間的というよりさらに風そのものだったりという自然的なもの。例えば風を音に変えていくのに適するものといえば風鈴ですね、水だったら鹿威し。ただ自然そのものを感じたいと思っているわりに、現代人の能力はそれほど高くない。

 その橋渡し役として風鈴や鹿威しはあるわけですね。その部分を僕なりのつなぎ方をしたいと思ったときに、楽器のくせも取り入れよう、生のものであるがゆえに電子化すると排除されるような、一つ一つの音のばらつきや音色の違いも入れてしまおうと思ったんです。

 ですから、MIDIで作業するのではなく、あえて一音一音を録音して、それを貼り付けていく方法を選んだんです。で、その音を貼り付ける時に、音楽化する一番の方法は歌うことですから、自分で歌って、そのタイミングとか音量の波形を作って、それを別の楽器に置き換えていきました。考えてみれば非常に素朴なやり方だと思います……大工の仕事に似ているかもしれません。

 楽譜が設計図とするならば、まず設計図を見て素材を探してくる。どこを切り取ってどこをつなぎ合わせるかと考えながら音を組み立てていく、そういう作業です。設計図を見ながら、どの音を使うかを探して音の大きさ長さ、途中の減衰の仕方とかを自分で作り直していくわけです。大工さんです。

   コンピューター上で波形編集を施し、まるで“ゆらぎ”までも感じさせる音に仕上がっている。実際の波形編集という作業はどんなものだったのだろう?

◆加藤 普(かとう・あきら)プロフィール
1949年島根県生まれ。早稲田大学中退。フリーランスのライター・編集者として多くの出版物の創刊・制作に関わる。70~80年代の代表的音楽誌・ロッキンFの創刊メンバー&副編、編集長代行。現在、新星堂フリーペーパー・DROPSのチーフ・ライター&エディター。

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