「この国の人たちを助けたい」 インド人指揮者、魂の「第九」

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外国人がいまの日本に来ることの意味

   いま東京を歩くとよくわかるのだが、ほとんど外国人の姿を見かけない。みな本国からの出国・召還命令に従い、日本を離れているのだ。海外から見れば、福島原発事故による放射能汚染の影響は日本全国、ことに東京への影響は深刻で、一刻の猶予もなく自国民の安全を確保しようとしている。

   それは当然のことだが、過剰反応とはいえ日本人としてはなにか取り残されているようで、無性に寂しく腹立たしくもある。だが、いまの日本に来るということの意味は、その場にいる我々日本人には理解しがたいことだが、ある意味、命を賭してということなのだ。それほどの思いがなければ、日本に来ることは考えられないのだ。

   多くの外国人が日本への渡航を見合わせ、クラシックに限らず音楽公演も中止が相次いでいるが、被災者を思いボランティアで再来日してくれたメータ氏の行動は、日本人として心に刻まねばならない。

   ズービン・メータの指揮には賛否両論ある。可もなく不可もないと言う人もいる。神だという人もいる。そうした評価は大事なことではあるが、是非「人々のために命を賭すことのできる」指揮者の音を聴いて判断して欲しい。紹介した音源は、メータの最高傑作といわれる1975年の音源から。

加藤 普

◆加藤 普(かとう・あきら)プロフィール
1949年島根県生まれ。早稲田大学中退。フリーランスのライター・編集者として多くの出版物の創刊・制作に関わる。70~80年代の代表的音楽誌・ロッキンFの創刊メンバー&副編、編集長代行。現在、新星堂フリーペーパー・DROPSのチーフ・ライター&エディター。

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