実用的な写真技術としてダゲレオタイプのカメラがパリで発表されたのが1839年のこと。以降、カメラはめざましい技術革新を遂げていくのだが、それに呼応するように19世紀半ばから20世紀の初期にかけて世界の動勢も大きな変化を見せる。イギリスから始まる産業革命、ナポレオン三世による第二帝政、ドイツ帝国の成立、ドイツ・オーストリア・イタリアの三国同盟、イギリス・フランス・ロシアの三国協商、パリ万博、そして3000万人余の戦死者・負傷者を出した第一次世界大戦・・・。こうした欧州激動の時代をレンズで捕らえ、豊富な貴重写真とともに解説した書籍『レンズが撮らえた19世紀ヨーロッパ―貴重写真に見る激動と創造の時代』(山川出版社、著・海野弘ほか、2010年12月発売)が注目を集めている。
第一部「ヨーロッパ激動」、第二部「王族たちの隆盛と落日」、第三部「花開いた芸術・文化」、第四部「変わりゆく人々の暮らし」の四部構成で、「切り裂きジャック事件」「第一回近代オリンピック開催」などのコラムも充実。
当時と現代で、ほぼ同じ場所を写真で比較した巻頭企画も一見の価値がある。
単行本、205ページ。定価1680円。