『慢性拳闘症』
映画「あしたのジョー」が2011年2月11日から全国の東宝系劇場で公開されて話題だ。ジョーの役を「山P」こと山下智久さんが、ライバル・力石徹役を伊勢谷友介さんが演じることでも注目を集めたが、元ボクサーでジョーを育てる丹下段平役・香川照之さんの演技は、その2人以上に鬼気迫るものがある。
13歳のころから、約30年にわたってボクシングを熱いまなざしで見続けてきた香川さんは、ボクシングを熟知している。選手経験はないが、一家言持っている人物だけに、撮影現場でも山下さんや伊勢谷さんへの"指導"に力が入る。もちろん、その情熱は自身にも及び、曽利文彦監督のイメージしていた丹下像をはるかに超えた、限りなくマンガに出てきた「丹下像」に近いメーク&ふん装を施すことになった。
まさに激闘ともいえる香川さんの撮影日記が、2011年2月4日、『慢性拳闘症』(講談社)として上梓された。「キネマ旬報」の連載コラム「日本魅録」でキネマ旬報読者賞を受賞している文章力には光ものがあり、読者の気持ちを引きつけて放さない。映画化が決まるころは、ちょうど大河ドラマ「龍馬伝」の撮影まっただ中だったこともあり、「あしたのジョー」映画化にからんだ龍馬役・福山雅治さんとのやりとりもある。
じつは香川さん、自身が丹下段平役で映画「あしたのジョー」に出演する話を、この福山さんから初めて聞かされたそうだ。
単行本(ソフトカバー)、210ページ。定価1470円。