フライド・プライド(FRIED PRIDE)
フォー・ユア・スマイル
VICJ-61647
3150円
2月2日発売
Victor
日本の女性ジャズ・シンガーというと、1970年代頃から、「美人シンガー」でなきゃといった流れがあったような気がする。と同時に、なにか女性的なたおやかさを持った声が主流だったとも思う。たとえば日本を代表する女性ジャズ・シンガーである阿川泰子のような。
それが21世紀に入ると、多くの個性的なシンガーが登場してきた。綾戸智恵のような「なにもそんなところにこだわらんでも良かろう」という流れもできてきた。雰囲気で流れていくような歌ではなくて、溝口恵美子、仲宗根かおるらのような、はっきりとした主張が垣間見える歌こそ「ジャズ」!的な感じでしょうか。
ジャズ・ヴォーカルの新たな境地へ
そんな中、2001年にアメリカの名門ジャズレーベル「コンコード」から、『FRIDE PRIDE』でアルバムデビューしたフライド・プライドは、当時の印象としては、まったく新しいジャズ・ヴォーカルの地平を拓いて見せたという気がしていた。
まず、フライド・プライドというユニットのユニークさ。ギターとヴォーカルというライヴ可能な最小の単位で、しかもそれがすべて。レコーディングに参加するミュージシャンはいるけれど、基本はエラ・フィッツジェラルド+ジョー・パスのように、ヴォーカル・shiho+ギタリスト・横田明紀男の二人。それでありながら、作り出される世界観は豊穣で、唯一無二。
とくに、shihoの歌声は、それこそ一度聴いたら忘れられない類いの声、そしてヴォーカル・テクの確かさといったら。横田のいわゆる超絶技巧ギター・テクにも、驚かされ舌を巻く。
Barで心地よく流れるBGMのように?
そして、コンスタントにアルバムを出し続けて、通算8枚目のこのアルバムが『フォー・ユア・スマイル』。これがまた、これまでの7枚と趣が異なり、大スタンダード大会。でも、それが良いのだ!
「Barで心地よく流れるBGMのような作品を作りたくて、肩の力を抜いて歌いました。聴いてくれた方に自然とSmileがこぼれますように♪」とはヴォーカルのshiho。
彼女はそう言うけれど、聴く側としてはBGMを聴くようには、肩の力は抜けない。キチンと語りかけてくる歌声にハッキリと反応してしまうのだ。
ギタリストの横田は「スタンダードに対峙する上で問われるのはアーティストの人間性や哲学。誰にも似ていない『You'd Be So Nice To Come Home To』や聴いたことのないアレンジの『A Night In Tunisia』など、フライド・プライドのものとなった楽曲に触れてほしい」と言っている。むしろ、こちらの引き受け方をせざるを得ないだろう。まずは一聴に値する名盤!
【フォー・ユア・スマイル 収録曲】
1. ドント・レット・ミー・ビー・ロンリー・トゥナイト
2. ガール・トーク
3. チュニジアの夜
4. 愛ある限り
5. オンリー・ユー
6. ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ
7. サムワン・トゥ・ウォッチ・オーヴァー・ミー
8. ワン・ノート・サンバ
9. ソー・イン・ラヴ
10. 二人でお茶を
11. BAD
12. 恋愛PUZZLE(ホエン・ウィ・セイ・グッバイ)
13. ラズマタズ
14. スマイル
加藤普