リアルから仮想化へと変遷 音楽産業はどこへ向かうのか(下)

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「リアルな情報」に関わる者は生き残る

   では、それ以外の現行の音楽産業従事者は、どこへ向かえばいいのか?

   結局のところ、おそらくは音源としてのミュージシャン、彼らの創る音源、その著作権などの管理、ライヴ制作などのイベントメーカー、クラウドなどにおける音源の一元管理者など、「新しい」システムの管理・維持者だけが生き残ることになるだろう。別の言い方をすれば、複製ではなく"リアルな情報"に関わる者たちのことだ。そのどこかに属することは、未来を切り開く鍵になる。

   だが、CDに代表されるパッケージメディアの主商品であった音楽は、すでに商品であることを拒絶している。映像商品も今はまだダウンロードするには情報量が大きすぎるから継続しているだけで、未来はわからない。やがては音楽情報と同じ道を歩むことになりそうだ。パッケージメディア商品は主流から弾きだされ、生き残りは図れない。おそらくは近い将来、音楽産業構造の現行システム/プロセスは、音を立てて完全崩壊する、と思わざるを得ない。

   そこで、音楽産業というくくりから外れるというのも手だ。いまからでも遅くはない、富士フィルムがコラーゲンという共通項を利用し、フィルムからメタボ防止のサプリメント開発に転進したような、まったく別の産業構造に殴り込みをかけるか、まったく新しいシステム/プロセスを別の産業の中で構築するか。残された道は限られているのではないだろうか。

加藤 普

◆加藤 普(かとう・あきら)プロフィール
1949年島根県生まれ。早稲田大学中退。フリーランスのライター・編集者として多くの出版物の創刊・制作に関わる。70~80年代の代表的音楽誌・ロッキンFの創刊メンバー&副編、編集長代行。現在、新星堂フリーペーパー・DROPSのチーフ・ライター&エディター。

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