リアルから仮想化へと変遷 音楽産業はどこへ向かうのか(上)

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商品化のプロセスがデジタルに駆逐

   「情報」は、ただあるだけでは何も生み出さず、情報を必要とする人と出会うことで、はじめて価値が生まれる。だから、レコード会社やCDショップには大きな存在理由があった。同じ理由で、両者を結ぶCMや情報を伝達するメディアもまた必要だった。

   ひるがえって、インターネット社会では、たとえば動画共有サイト「YouTube」などで公開されていれば、それを必要とするユーザーに直接届けられる。情報と情報を欲するユーザーを結ぶプロセス/システムは将来も必要だが(詳しくは別稿で触れたい)、インターネットであれば、とりたてて音源をパッケージとする必要も、店舗でそれを販売する必要もない。リアルな広告宣伝(テレビのCM等)さえも要らないだろう。

   端的に言えば、前述した従来のような音楽産業がなくなってしまうことにほかならない。別の視点から考えると、音楽産業の中でもアナログ的だった商品化=モノ化・販売というプロセスがデジタルに駆逐され、リアルから仮想化の道をたどっているとも言える。

   この話、次回(下)に続きます。

加藤 普

◆加藤 普(かとう・あきら)プロフィール
1949年島根県生まれ。早稲田大学中退。フリーランスのライター・編集者として多くの出版物の創刊・制作に関わる。70~80年代の代表的音楽誌・ロッキンFの創刊メンバー&副編、編集長代行。現在、新星堂フリーペーパー・DROPSのチーフ・ライター&エディター。

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