電子書籍の台頭で紙の本が危機に瀕していると言われている。本当に紙の本はなくなってしまうのだろうか。
阪急コミュニケーションズが、2010年12月17日に発売した新刊本『もうすぐ絶滅するという紙の書物について』(著ウンベルト・エーコ、著ジャン=クロード・カリエール、訳・工藤妙子)は、まさに紙の書籍の未来について、フランスの脚本化カリエール氏とイタリアの記号学者エーコ氏が徹底的に語り合っていて興味深い。書物の未来があるかについて両氏が導く答えは「イエス」だ。この対談の争点は、電子書籍の導入による変化や混乱を予測することではない。両氏は、「本」は完成された発明品ととらえており、技術革命によってさえその運行を止めることができない「知と想像の車輪のようなもの」だとみている。
フランス人ジャーナリスト、ジャン=フィリップ・ド・トナックは今回の対談を、「マーシャル・マクルーハンが『グーテンベルクの銀河系』と呼んだ書物の宇宙への温かい賛辞であり、本を読み愛玩するすべての人々を魅了するでしょう」とコメント。文学、芸術、宗教、歴史とジャンルをまたぎ、さらにヨーロッパから中東、インド、中国、南米へと時空を駆けめぐりながら繰り広げられる厚みある内容に、紙の書物の未来を自然と期待してしまう。
単行本、472ページ。定価2940円。