「長生きしたくない」「長生きはリスク」と考える若者が増えていることが、東京海上日動あんしん生命の「『長生き』に関する意識調査」で浮き彫りになった。調査によると、長生きを「不安」ととらえている人は回答者全体(20~65歳の男女832人)の85.7%、長生きが「リスク」であると考えている人も68.3%を占めた。
なかでも、長生きを「リスク」と考えている人のうち、「長生き願望がある」と答えた20~30代は男性でわずかに27%、女性は42%だった。これを20歳代男性に限ると、わずか22%にとどまる。
「厳しい現実に向き合うことから始める」
日本人の平均寿命は90歳に近づいている。厚生労働省の調べでは2010年9月15日時点で、日本の総人口に占める65歳以上の割合は23.1%となり、過去最高を更新。65歳以上の高齢者社会は、まもなく「4人に1人」の時代に突入するのだから、若者の「長生き」への意識が変化していても不思議ではない。「長生きリスク症候群」ともいえる事態なのだ。
若者が「長生き」に執着しない理由のうち、男性に多いのが「長生きにこだわりがないから」という刹那的なもの。一方、女性の場合は「自分の介護で家族に負担がかかるから」が最も多く、周囲に対する遠慮の気持ちが強いようだ。
こうした結果について、フィナンシャル・プランナーの鬼塚眞子さんは、「若いのだから将来への漠然とした不安があるのはわかる。しかし、まずは自らの現状を正しく把握すること。老後にいくらかかるのか、厳しい現実に向き合いながら、突き詰めてプランを考えるべきで、そうでないとそれまでに何をすべきか、どう備えるべきかは見えてきません」と手厳しい。
45歳以上の約半数が「長生き」の準備不足を後悔
東京海上日動あんしん生命の調査によると、長生きして不安に感じることの理由(複数回答)は、まず「お金」(77.7%)。次いで「病気・入院」(77.4%)、「介護」(62.6%)だった。「不安」を感じるようになったのは、多くの人が2008年のリーマン・ショック以降のようで、「経済状況・社会情勢」をあげる人も49.6%いた。
また、45歳以上の人の52.4%が「20~30歳代の頃に長生きに向けて備えていなかったが、準備しておくべきだった」と感じていて、「節約・貯金」(54.1%)や「健康管理」(33.2%)、「ライフプランの作成」(31.7%)などの準備不足を後悔している。
いま、65歳の男性の「平均余命」は19年、女性は24年にもなる。その一方で、65歳以上の高齢者の平均貯蓄額は2452万円だから、これでは生計が立ち行かなくなるし、病気や入院、介護となれば、さらにお金が足りなくなる。
「長生き」のための「特効薬」はなかなか見つからないが、若者には少しでも不安を解消できるよう、早めに備えておいてもらいたいものだ。