民族楽器は不協和音を奏でない 今聴きたい「ミャンマーの竪琴」

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World Roots Music Library(東南アジア8 ビルマ)
ビルマの音楽~竪琴とサイン・ワイン
KICW-85012~3(2枚組)
2800円
2008年7月9日発売


   今年の1月にミャンマーのマウン・ウ内相が、11月にも非暴力民主化運動指導者・アウンサンスーチーさんを解放すると発言していたが、その言葉どおり、約7年半ぶりに軍政による軟禁状態からアウンサンスーチーさんが解放されたというニュースを聞いて、ミャンマーの今後に光が見えたように感じた人も多かったのではないだろうか。

   ここで政治向きの話をするつもりはないが、このニュースを聞いてミャンマーの音楽が俄然聴きたくなった。というのも、最近のミュンマー情勢からは想像もできない美しい音楽が、そこにはあるからだ。

   ミャンマーといえば、竹山道雄が戦後まもなく著した児童小説「ビルマの竪琴」の舞台となった「ビルマ」が、我々昭和世代にとっては近しい国名。ちなみに漢字では「緬甸」と表記するそうだ。旧首都ヤンゴンは「ラングーン」だった。いまや首都は、熱帯雨林を切り開いて創出された「ネピドー」となってしまったが、それでもなぜか、「ビルマの竪琴」から受けたインスピレーションは今でも消えることがない。

「いま聴くのがベストのタイミングだ」

   ビルマの竪琴とは「サウン・ガウ」と呼ばれる民族楽器で、古代インドで生まれたとされる。この「サウン」はじめ、ビルマの音楽を彩る楽器は数知れず。世界で最も美しい黄金のオーケストラ「サイン・ワイン」、竹琴「パッタラー」、弦楽器アップライト・カーヌーン「ドゥンミン」、ビルマ風マンドリン「マダリン」などの音を収録したのが、今回紹介するキングレコードの誇るWorld Roots Music Libraryからアルバム『ビルマ音楽/竪琴とサイン・ワイン』だ。

   2008年の発売だが、いま聴くのがベストのタイミングだと、勝手に思っている。こんなにも美しい音楽を民族の財産として持ち、かつ仏教徒であるミャンマーの人々が軍政下という政治のステージを、そういつまでも力任せの体制を維持できるとは思えないから。

   アウンサンスーチーさんの今後の活動も、軍事政権側の対応も、自分たちの音楽という民族としての財産に耳を傾けてから、という約束事を決めても良いくらいだと僕は思う。それほど心が広がる音なのだ。

加藤 普

【ビルマの音楽~竪琴とサイン・ワイン 収録曲】
[DISC1]
1. ウェイザヤンダー(ヨウダヤー)
2. ザティアナー・サチャーウェイラー(ヨウダヤー)
3. 雨の歌
4. タン・パッタラーの演奏
5. ドゥンミンの演奏
6. パルウェイの即興演奏
7. マダリンの演奏
8. ベインバウン(レイギン)
9. ナンボウン・ティーハー・ボウェイ(ヨウダヤー)
10. アテッケー・シーセイ・ロウ(ティーロウン)
11. ウェイザヤンダー(ヨウダヤー)
[DISC2]
1. パナーマ「挨拶の序曲」
2. 5種類の音楽
3. パナーマ音楽
4. ネーとパット・ワインの即興
5. ラー・サンダー(「月」)
6. パルウェの即興
7. 雨季~マンダレーの都
8. 国王を讃える歌(ネー・ジー)
9. 月光の下で恋人を馬に乗せる
10. トー・ボエ(男声)
11. トー・ボエ(女声)
12. 恋人の気持ちを戻す歌
13. 夏が来ると雪が消える
14. 愛する雪
15. ティーダ
16. サウンの即興
17. ミャンマーの多民族は仲良くしよう

◆加藤 普(かとう・あきら)プロフィール
1949年島根県生まれ。早稲田大学中退。フリーランスのライター・編集者として多くの出版物の創刊・制作に関わる。70~80年代の代表的音楽誌・ロッキンFの創刊メンバー&副編、編集長代行。現在、新星堂フリーペーパー・DROPSのチーフ・ライター&エディター。

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