類まれな食の知識と一級の舌をもったホームレス「ヤッさん」が主人公のユーモア人情小説『ヤッさん』(著・原宏一、双葉社から2010年10月28日発売)が話題だ。
東京・銀座を舞台に、ホームレスというイメージからは遠い、極めて明るくポジティブな生活を送るヤッさんは、ある朝、新米ホームレスのタカオと出会う。大学を出て、会社勤めをしたが、結局なじめず、銀座に舞い込んできたタカオにとって、自分の足でかせいだ情報を武器に、一流店の料理人との関係を築き、堂々と食にありつくヤッさんは、まぶしすぎるほどの存在に映った。
ヤッさんの「弟子」として過ごす日々は、刺激的で勉強になることばかり。いつまでも一緒にいたいと思うタカオだったが、ヤッさんはタカオを「破門」した。その理由とは・・・?
今日も銀座をTシャツ姿で走っているかもしれない、と思わせるような、豊かで躍動感あふれる文体が、ヤッさんだけでなく、タカオ、そして彼らを取り巻く人々の人物像をリアルに浮き上がらせる。
「最近元気がなくて」という人にすすめたい一冊だ。
単行本、321ページ。 定価1575円。