幻冬舎は2010年10月、新刊本『悪名の棺 笹川良一伝』(著・工藤美代子)を発売した。笹川氏の生涯を伝える書籍は数あるが、同書は、「政財界の黒幕」と恐れられた笹川氏のカネ、女、国家観など、知られざる素顔に迫っている。
「人類みな兄弟」「一日一善」と声を張り上げたテレビCMをご記憶の方も多いだろう。 財力を身につける天賦の才を持ちながらも、福祉事業に労を惜しまなかった。ぜいたくを嫌い、質素な生活を好んだ。その一方、「英雄 色を好む」の言葉どおり、女性に対してはかなり発展家だったようで、男装の麗人・川島芳子とは「何度も寝ている」(三男・陽平氏)らしい。GHQとのやり取りで、川島芳子との関係について聞かれ、「僕は腰から上の人格者で、腰から下は敢て、保証の限りではありませんから・・・」と答えて相手を大笑いさせるなど、なかなかにユーモアの持ち主でもあったとみる。
著者の工藤さんは、
「笹川の九十六年にわたる長い長い道程を予見なしに検証してみたいと思った。今もなお部厚い悪評の層に覆われた笹川良一像の真の姿を掘り起こしてみたかった」と記しているが、全415ページで伝えるその成果は珠玉といっていいだろう。
単行本、定価1785円。