「音楽」という言葉に込められた意味
ところで、「音楽」という言葉そのものは、中国で紀元前3世紀に成立した『呂氏春秋』に出てくる。そこには「音楽之所由来者遠矣、生於度量、本於太一」と表現されている。
「度量」とは音の規則つまり音律を指すらしく、「太一」は本源的な宇宙の根本法則を意味する。してみると、「音楽」とは宇宙根源の法則から生まれた音律ということになる。ならば、初出の文字としての「音楽」は、放置プレーである「楽しい音」に近かったのか。
基本的にはどちらでも良いことなのだろうが、音楽家であればその拠って立つ立ち位置で、できあがる音楽は根本的に違うものになるだろう。また、聴き手のスタンスの差は、音楽によって自分の中で沸き起こる"化学変化"の差になってでてくるだろう。
上手い言葉が見つからないが、一過性なのか、永続的なのか、というくらいの差にはなりそうだ。「音楽ってなに?」という問いに明快には答えることはできないけれど、筆者としては「音楽によるだろ?」と実もふたもないところで終わりにしたい。
加藤 普