エディット・ピヒト=アクセンフェルト(チェンバロ)
バッハ:平均律クラヴィーア曲集 第2巻
HQMA-00018
サンプリングレート:88.2KHz/24ビット
9月10日配信開始
カメラータ・トウキョウ/クリプトン
今回紹介するのは、残念ながら「音盤」ではない。「音盤見聞録」を名乗りながら、別のメディアを紹介することにしたい。
親日家で知られるエディット・ピヒト=アクセンフェルト
音源自体は、1979年に日本の埼玉で録音されたものだ。戦前からヨーロッパで活躍し、1937年に「第3回ショパン国際ピアノコンクール」で第6位特別賞(ショパン賞)を受賞するなどした名演奏家、バッハを弾かせたら「敵う者はない」といわれた、ドイツのチェンバロ演奏でピアニストのエディット・ピヒト=アクセンフェルト。残念ながら2001年に亡くなられている。享年87歳だった。
エディット・ピヒト=アクセンフェルトと日本との関係は深く、親日家でもある。今年で第31回を数えた群馬県草津温泉で毎年開催される「草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティバル」(2010年は8月17日~30日開催)では、亡くなられるまで毎年のように講師として参加。日本の若手演奏家育成に力を注がれた。
音源であるバッハの「24の前奏曲とフーガ」は、鍵盤楽器のためにすべての長調・短調を駆使した2組の「平均律クラヴィーア曲集」全2巻として残されている。エディット・ピヒト=アクセンフェルトの真摯な演奏はどれも、30年以上経た演奏とは思えない輝きに満ちている。
そして、今回この音源を取り上げたのにはもう一つのわけがある。
CDより良い音が聴ける配信方法
実はこれ、CDというパッケージメディアではなく、ネット配信なのだ。
昨年6月、株式会社クリプトンが運営する音楽配信サービス「HQMストア」(HQM=High Quality Music)でデータ配信による音源販売をはじめたのだが、音源のクオリティが非常に高い。
従来のネット配信で用いられているMP3フォーマット等は圧縮前のデータに戻すことができない非可逆圧縮方式だが、これは圧縮前のデータに戻すことができる可逆圧縮方式のFLACフォーマットで配信している。だから、スタジオ・マスターと同水準の高音質なデータ(88.2kHz/24ビット)で、通常のCDクオリティ(44.1kHz/16ビット)を凌駕する。クラシック音源でありながら、CDより良い音が聴けるのだ。
この7月には「平均律クラヴィーア曲集」第1巻(BWV846~869) がすでに配信されていて、今回は第2巻の配信。これからは、こうした音源すらネット配信へシフトするという先駆けの感があり、「音盤」の残る可能性がいよいよ狭められるような気がしている。こうした流れ、傾向は増えていくに違いない。e-onkyo musicなども同様に展開している。
パソコンでも再生可能だが、専用プレーヤーなど高音質機器と接続すれば、音源のハイクオリティな聴きごたえある再生ができる。
加藤 普
【J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集 第2巻 収録曲】
・24の前奏曲とフーガ
第1番 ハ長調 BWV870~第24番 ロ短調 BWV893