東京・表参道にぽつんとたたずむ1軒の青果店が話題になっている。店の奥には木製のベンチが置かれており、店の人とまったり世間話をしてしまいそうな、昭和な雰囲気が漂う。
偏ったラインアップが特徴
「表参道市場 伝」は、表参道駅から徒歩3分、青山通りから小道を奥に入ったところにある。美容院やレストラン、最新のファッションビルに囲まれた2階建ての木造建築。格子戸を見て駄菓子屋かと思い近づいてみたら、ちょっと変わった青果店だった。
約5坪の売り場スペースに置かれた畳2枚ほどの平台には、トマト、オクラ、ゴーヤにナスといった夏野菜が並んでいた。壁際の棚には調味料、ジャム、ドレッシングに、おしゃれな食器まで売られている。
商品の多くは関東の農家から直接仕入れる。主催する大森裕子さんは、セレクトの基準を「母が子どもに食べさせたいもの、父が子どもに残したいもの」だという。旬を大事にするので、別々の農家からニンジンが4種類集まった、ジャガイモが8種類集まったと、偏りが生じることもしばしば。スーパーのように年中欲しい品物が揃っていない場合もあるが、代わりに1年で最もおいしい時期の野菜に出合える。
店で品定めをしていると、「珍しい野菜もありますよ」と、食用ほおずきを試食させてくれた。他にも赤オクラやバナナピーマンなど、珍しい野菜が揃う。決して必要ではないが、面白そうだからつい買ってみたくなる、雑貨ショップの感覚に近い。昼間は周辺のショップ店員が、夕方は近所の主婦が宝探しのようにやってくる。