毎年、終戦記念日が近づくと、テレビや雑誌などで戦争関連の話題を取り上げることも増えるため、「あの時代」へのやるせない思いは強くなる。実際に戦争を経験した人どころか、戦争を知らない世代が大部分となった今だからこそ、年にほんの一時期くらいは、愚かな争いをふり返ることで、気持ちを新たにしてもいいのではないだろうか。
2010年7月11日、産経新聞出版は元陸軍大将・今村均が書き残した『幽囚回顧録』(1966年)を、41年ぶりに復刊、『我ら戦争犯罪人にあらず』として発売した。同書は、今村元大将が、ラバウルやニューギニアなどの収容所で過ごした数年間に書き残したメモや日記をもとに書籍化されたものだ。そこには、「人格者」としても知られている今村元大将の、戦勝国が敗戦国を、それも事後の法律をもとにして裁くという「無念さ」がにじみでている。
また、随所に盛り込まれた、英霊となったかつての部下たちとの「最後のやりとり」や、現地の住民、敵軍将校とのさまざまなエピソードなどからも、今村均という人物を知ることができる。
今村元大将は昭和28年(1953年)のマヌス島刑務所閉鎖まで服役。帰国後、世田谷の自宅の一隅に3畳の小部屋をつくって幽閉し、質素な生活を続けながらこの『幽囚回顧録』をしたためたという。
単行本、285ページ。定価1680円。