フェティシズムとは「異性の衣類、装身具などに対して、異常に愛着を示すこと。性的倒錯の一種」(「広辞苑」第六版)――。他にも意味はあるが、2010年7月上旬に発売されたばかりの写真集『スクールガール・コンプレックス』(イースト・プレス)におけるフェティシズムはコレに近い。ポーズ自体には不自然なものも多いが、著者というか撮影者の青山裕企氏には織り込み済みのことだろう。ガラスの向こうで押しつけられたシャツの胸元、押し入れから尽き出た「紺ソ」のナマ脚、微妙なローアングルから確実に仕留めた太股・・・。ミニスカ女子高生たちの無防備な制服姿から見事な計算で切り取られたカットの数々。だか、そこには不思議にいやらしさがなく、むしろ清潔感が充満している。
同写真集は、発売からわずか4日で大増刷が決まったという。当然、裸があるわけなく、セクシー写真集のカテゴリーにも入らないはずなのだが、売れている。なぜか?
きっと、1枚1枚の写真に、清潔感ある若い女のコの「ニオイ」のようなものが感じられるからに違いない。
青山氏は筑波大学時代に心理学を学んだ。世界中を旅してもいる。『スクールガール・コンプレックス』は、フリーカメラマンになってから2冊目となるものだが、1冊目の写真文集『ソラリーマン』同様、青山氏の希有な感性、洞察力が十二分に発揮されている。
「このシリーズは、2006年から撮り続けています。女子高校生から感じる記号性(アイコンっぽさ)や、思春期だったころの妄想(むっつりな感じ)を表現するために、悩みながら(悶々としながら!)制作してきました。もし良かったら、手に取り眺めながら、思春期に戻ったり、悶々としたり、図鑑のようにクールに見たりなど、色々と楽しんでいただければと思います」と青山氏は話している。
A5判変型、160ページ(フルカラー)ソフトカバー。価格1880円。