レストランでもバーでもカウンターが好きな友達がいます。バーテンダーやサービススタッフとの距離の近さや、テーブルを少人数で占拠しているでもない気兼ねなさなど、座ってみるとカウンターって結構いいものです。そして、居心地のいいカウンターが多いのもニューヨークの魅力の一つ。
先日、バーテンダーが、「今日、セールスマンが持ってきたウィスキー。これニューヨーク産なんですよ。珍しいでしょ」と、ボトルを見せてくれました。
「自分達の飲みたいウィスキーを作りたい!」
1919年、アメリカで始まった禁酒法によって、ニューヨークに1000軒以上もあった蒸留所は、全て廃止となりました。それから86年後の2005年、マンハッタンから90マイル北上したハドソン渓谷にある小さな町ガーディナーに「タットヒル蒸留所」が誕生したのです。バーテンダーが紹介してくれたウィスキーは、ここから生まれた物だったのです。
ニューヨーク生まれで、35年間蒸留所勤務の経験のあるラルフ・エレンゾさん、エンジニアだったブライアン・リーさんら3人が「自分達の飲みたいウィスキーを作りたい!」と、築220年の粉引き小屋を改装して蒸留所を作り、2001年、ゼロからの仕込みを始めました。
「うちの1年の生産量は、大手の蒸留所が1日に、こぼしてしまう量ほどの超マイクロ蒸留所なんですよ。地元産のコーンで仕込んだコーンウィスキー、それをアメリカンオークの樽でエイジングしたバーボン、ライウィスキーなど7種類のウィスキーに、ラム、ウォッカも生産しています」と、ラルフ・エレンゾさん。