物価上昇、医療費や保険料の値上げ・・、年金生活者の不安が増すばかりの昨今、フランスでは、高齢者が不動産を死後に引き渡す条件で売却するシステム"ビアジェ(viager)"の活用が盛んになっている。
不動産の買い手が、毎月の生活費を保障
不動産広告を眺めていて、「何でこんなに安いの?」と思うと、たいてい"ビアジェ"と記されている。これは、高齢者が居住中の持家を死後に引き渡すことを条件に売却する、個人間の不動産売買システムで、価格として表示されているのは、契約時の一時金で、その後、売り手は、亡くなるまで毎月、生活費となる一定の金額を受け取れるしくみだ。
例えば、ビアジェの広告文は、『パリの1DKのアパルトマン 一時金6万ユーロ、毎月800ユーロ 85歳女性 (アパルトマンの市場価格20万ユーロ)』といった具合だ。庭付き一戸建ての家なら一時金も高く、月の受取額が2000ユーロ以上だったり、ワンルームのアパルトマンなら月額が300ユーロ程度だったり、と売り手は家を手放すことなく、その資産価値に見合った一時金及び、毎月の受取額を決めることができる。つまり、持家を担保にした終身年金とも呼べるもので、その契約は公証人を通して行われる。