1周忌に寄せてトリビュート 親愛なるMJを閉じ込めて…

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『ネヴァー・キャン・セイ・グッバイ』
『ネヴァー・キャン・セイ・グッバイ』

トレインチャ
『ネヴァー・キャン・セイ・グッバイ』
TOCP-70838
2300円
5月5日発売
EMIミュージック・ジャパン


   6月25日が来ると、マイケル・ジャクソンの1周忌になる。亡くなってこの1年で、どれほどMJが偉大な存在だったか、嫌というほど知ることになった。

   1990年代、MJは整形疑惑、幼児虐待疑惑などスキャンダラスな側面がクローズアップされ、メディアもエンターテイナーとしてのMJの活動を重要視しなかった。実はその蔭でMJはチャリティー活動を活発に行い、クリエイターとしてもポリティカルなアプローチから社会問題、環境問題などを取り上げ歌った。だが当時はそれすらも揶揄の対象にされていた。

   だが、この1年、MJをスキャンダラスに採り上げる論調はどこにもない。ひたすら「KING OF POP」に相応しい採り上げられ方だった。そして多くのアーティストが、MJに敬意を捧げる作品を送り出した。

   その中の1人、オランダを代表する歌姫=トレインチャは、12歳の頃、弟に「マイケルは私と結婚するのよ!」と言っていたほどのマイケル・ファンだった。その彼女はかつて1996年に行なわれたMJのワールド・ツアーで、滅多にサポート・アクトなど起用しないMJが気に入り、オランダでのサポートとして起用した当時のオランダのトップ・グループ「トータル・タッチ」のヴォーカリストとして同じ舞台に立った。そんな縁もあり、トレインチャにとってMJは唯一無二のまさに「KING OF POP」だった。だからMJの死という事実を受け入れることができないくらいショックだったという。

   その彼女が、卓越したテクニックを持つギタリスト=レオナルド・アムエドや、オランダの女性サックス奏者キャンディー・ダルファーらと共に制作した、アコースティックでのMJのカヴァーアルバムがこれ。

   このアルバムについてトレインチャは「この作品はマイケルへのトリビュート・アルバムではないの。トリビュートとは、オリジナルのアーティストにリスペクトを捧げながらも、自分らしさを加えていくスタイル。でもマイケルの音楽は、何も加える要素がないほど完璧だし、彼自身もトリビュートされることを望んでいないと思うわ。だから、このアルバムは私のマイケルへの愛や感謝の思いを、ただ閉じ込めているだけのアルバム」と語る。

   この言葉を聞くだけでも、何故か聴いてみたくなる。そして、聴いて、その思いの深さと完成度に時を忘れる。

加藤 普


【ネヴァー・キャン・セイ・グッバイ  収録曲】
1. ネヴァー・キャン・セイ・グッバイ
2. ベイビー・ビー・マイン
3. ミュージック・アンド・ミー
4. レディー・イン・マイ・ライフ
5. アイ・ウォント・ユー・バック
6. 想い出の一日
7. キャント・ストップ・ラヴィング・ユー
8. 今夜はドント・ストップ, ワーキング・デイ・アンド・ナイト,スタート・サムシン
9. アイ・キャント・ヘルプ・イット
10. ロック・ウィズ・ユー
11. ヒューマン・ネイチャー
12. ゴーン・トゥー・スーン
13. アイル・ビー・ゼア
14. ユー・ワー・ゼア
15. ヒーズ・アウト・オブ・マイ・ライフ ※日本盤ボーナストラック
スマイル ※hiddentrack

◆加藤 普(かとう・あきら)プロフィール
1949年島根県生まれ。早稲田大学中退。フリーランスのライター・編集者として多くの出版物の創刊・制作に関わる。70~80年代の代表的音楽誌・ロッキンFの創刊メンバー&副編、編集長代行。現在、新星堂フリーペーパー・DROPSのチーフ・ライター&エディター。

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