受賞後に「ものすごく落ち込んだ」理由とは・・・
「学校生活の中で皆がぶちあたる命題は『その中でどう生きていくか』。そんな中で生まれる『階層』を避けては書けないと思いました」(朝井さん)
ただ、ふとしたきっかけでその階層が「逆転」するような現象が起こる。「ここでこう繋がるのか!」といった、まるでミステリーのような展開も巧みだ。
花村萬月さん、村山由佳さんなどの人気作家を輩出した小説すばる新人賞は、気鋭の才能を見抜くことに定評がある。最終選考まで残り、「雲の上の存在」だと表現する選考委員の手に作品が渡ったというだけで「衝撃的で、それだけで十分」だったと朝井さん。実は受賞を聞いて作品が「お金を払って読んで戴くものになった」ことに責任を感じ、「ものすごく落ち込んだ」のだという。
当時を振り返り、「言葉にできない驚きと嬉しさ、それにそれと同じくらいの不安を感じています」という朝井さんは、こうメッセージを寄せている。
「読んで、懐かしい気持ちどころか、恥ずかしい気持ちになるかもしれませんが、心をこめて書きました。卒業アルバムを開くような気持ちで、ぜひ、読んでみてください」
ちなみに朝井さん、現在は長編のスポーツ小説を執筆中だという。<モノウォッチ>