先週末、娘が通う日系デイケアにてガレージセールが開催されました。目的は「売上金でAED(Automated External Defibrillator)を購入するため」。呼吸や脈がとまった人を救うために最初に施されるのが心肺蘇生法と呼ばれるCPR(Cardio Pulmonary Resuscitation)ですが、CPRとともに、AEDを使用することで救命率は向上します。
以前はかなり高額で、なかなか手が出なかったそうですが、コンパクトなタイプが出て、2000ドルあれば買えるようになったために、「何かあったときのために」とデイケアでは購入を考えはじめたそうです。
講習で取得できるサーティフィケート
先日、この日系デイケアにて日本語によるCPRとFirst Aid(応急手当)の講習会があり、一定時間の受講によってサーティフィケート(修了証)が取得できるとのことで参加してきました。アメリカではCPRが必修資格となっている職業が多く、教師や託児所、幼稚園などで子供を預かる仕事に携わっている人たちが含まれます。また有効期限が設定されているために、更新のためには再度受講しなければなりません。
CPRは心臓マッサージと人工呼吸を組み合わせて行われ、大人、子供(1~8歳)、乳児(0歳)によって施される技術が違います。このCPRが正しく行われるかどうかで、生死をわけ、とても重要となっています。
実は私自身、まもなく5歳になる娘が生後2週間ぐらいのときに、寝たまま全く動かなくなるという状況になり、夜中、救急車を呼んだことがあります。今考えればかすかに呼吸をしていたと思うのですが、そのときは何をしても娘が無反応で、またCPRの知識がないため、対応の仕方がわからず、あわてふためいてしまったのです。救急車とパラメディック(救急医療隊員)がつく直前に意識を取り戻したものの、「赤ちゃんの足の裏を叩きながら、声をかけ、反応を確かめ」ればよかった」そうです。
心肺停止後、1ヶ月後の生存率を救命率とするのですが、救命先進国アメリカの救命率は20%近いと言われているそうです。この差の秘密はCPR。アメリカでは心肺停止してしまった人が周囲の人によってCPRを施されるのが日本と比べて圧倒的に多いのです。
毎分100回の速度で100回マッサージ
例えば、ワシントン州シアトル市。世界一の救命都市といわれているこの街の全市民の6割の人がCPR講習を受講したことがあるために、そういう場に遭遇したとき、直ちにCPRを施せる確率が高くなります。
私が受けた講習会では実際にDVDを見ながら、講師からの指導をうけ、実際にマネキンやCPR用のマスクを使ってチェストコンプレッション(心臓マッサージ)や人工呼吸の練習をしました。
気道を確保して、空気を送り込み、1分間に100回のスピードで心臓マッサージを30回するという一連の流れは簡単なようでなかなか難しい。「ここでもたつくと、脳に空気が送り込まれません」と指導され、繰り返しているうちにやっとペースをつかんできました。そうはいってもこれを実際の現場で的確に行えるか、しかもAEDがくるとか患者が動き出すまで続けなければならないとなると相当の体力と根気が必要です。
学んだことは、一般市民用のやり方であって、看護士や救急隊員といった救命現場で働くプロが施すものとは違いますが、アメリカ心臓協会によって「ハートセーバーCPR&AED」とよばれるきちんとしたプログラムです。
CPRからの動きを引き継ぐAEDはスイッチをいれるだけで、次に何をすべきか案内されるのでそれに従って操作すればいいという簡単なものです。これまでAEDがどこに設置されているかなど気にもとめていなかったのですが、よくみてみると、大型ショッピングモールや空港などでAEDが設置されているのを目にします。
心配停止した人に対して効果があるのがCPR
日本でもだいぶAEDが普及し、駅やホテル、サッカー場など多くの場所で設置されていると聞きました。また、資格がない一般市民でも使用ができるようになったために、数年前まで3%前後だった救命率が、12%以上に増えているといいます。そうはいっても、AEDがその場にない場合、心肺停止した人にたいして効果があるのがCPRです。
民主党の小林千代美議員に対しての政治献金問題で話題になっている北海道教職員組合はAED(自動体外式除細動器)の導入に反対しているそうですが、アメリカでは子供(1~8歳)にも効果があるとされています。
今回CPRとともに講義をうけたFirst Aidについても、昔よかれとおもっていた処置方法が今では逆によくないとされているということを知りました。またこの受講後、友人の娘がやけどをしたり、息子さんがはちにさされたりというまさに応急手当が必要な場面が続いたために、生活していく上で必要な知恵を知るのと知らないのでは雲泥の差があると痛感したのでした。<モノウォッチ>
野村香奈