久しぶりに日本にもどって驚いた事の一つが、タバコ。レストランの中で、プカ~とタバコを楽しんでいる人を見た時のびっくり度は、かなりのものでした。
ニューヨークでは、レストラン、バー、およびすべての公共施設内では禁煙。
禁煙のオフィスビルで「家賃払っているんだから文句あるか!」と、オフィス内でタバコを楽しんでいた日本のエグゼクティブが窓拭きの人に怒られたという話も聞いたことがありました。
ゆえに酷寒のNYでも、タバコを吸いたい人はコートを引っかけ外へ。おまけに入り口付近で吸うと煙が逆流すると25フィート(7.62m)以上離れること!などと注意書きまで書かれる始末。
「1日1缶のソフトドリンクを飲むと、1年後に10ポンド太ります!」
この禁煙法案が出た時、バーテンダーからは「バーでの禁煙なんて、考えられない。俺達の生活がかかっているんだ。禁煙反対!」の声がでましたが、ブルームバーグ市長「あなた達の健康を考えてのことです!」と、てこでも動かず。
今となっては、その時の大騒動も忘れたかのように、禁煙、分煙を守って、吸う人も吸わない人も、皆が気持ちいい社会になりました。
このブルームバーグ市長、市民の健康を考えてくださるやさしい市長さんで、次々にお節介な法案を繰り出してきました。
「1日1缶のソフトドリンクを飲むと、1年後に10ポンド太ります!」というキャンペーンでは、ソフトドリンクから注がれた脂肪をごくごく飲むというかなりショッキングなCMを製作。
お菓子作りに使うショートニング、マーガリンなどに含まれるトランス脂肪酸も、心臓病の原因になると、徹底的に駆逐されました。
これだけではありません。カロリー表示もメニューに入るようになり、マクドナルドのビッグマックは540カロリー、ケンタッキーではエキストラクリスピーにした場合510カロリーが、グリルにすると190カロリーになると一目瞭然になりました。
塩分摂取 コントロールできる分量はわずか11%
さて市長さん、最近おとなしくなったと思っていたら、今度は、パッケージ入りの加工食品およびレストランの食べ物から、5年間で25%の塩を減らすという健康法案を、強制力はありませんとしながらも提案。
塩協会は「NYの保険所が国全体の基準を決めるなんて思い上がりすぎだ」と反論。「味覚は人それぞれ、判断は個々人にまかせるのでいいと思う」とも。
保健所のデータによると、いくら自分で塩分控えめを心がけても、自分でコントロールできる分量は塩分摂取量の11%にしかならないそうで、加工食品にすでに含まれる塩分が全体の80%を占めるゆえに、企業の協力が必要とのこと。
すでにサブウェイサンドイッチや自社食品ブランドを持つスーパーマーケットチェーンが協力を誓っています。
オバマ大統領のミッシェル夫人も、地元で取れた食べ物、野菜を食べようキャンペーンをすすめ、イギリス人シェフのジェイミー・オリバーも、全米で最も肥満度が高く、不健康な町といわれるウエストバージニアのハニントンで食べ物革命を起こしました。
オリバーシェフが、朝食にピッツアを食べさせているハニントンの小学校へ行って「これは何?」と、トマトを見せても「ポテト?」と答える子供達。
「よそ者に、あーしろ、これを食べろなど、いろいろ言われたくない。」と冷たい反応の中で進められる食べ物革命。一人でも目覚めて欲しいというシェフの気持ちが伝わってくるドキュメンタリーが3月26日からABCテレビで始まります。
こうしていろいろな人が声高に叫んでも、草の根運動を続けても、意識も知識もない人たちは、子供達にファーストフードを食べさせ続けるのがアメリカの現実。そして心臓病の罹患率は下がる見込みはありません。<モノウォッチ>
坂本真理