聴こえてくるのは魂の音・・・  C・ランディ独占インタビュー

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「視覚的発想、アイデアをそのまま形に」

   実は、確かにJAZZのアルバムなのだが、筆者は聴いてるうちに芝居の舞台を観ているような気になった。言葉も分らないのにCDからニュアンスが伝わってくるのだ。そればかりでなく、少し開いた窓から入り込んでくる風や、差し込む光までも感じる音だった。なによりも、この作品の必要最小限の音の中で、声が活かされ、その声によってまた周辺の音が活かされている。声も含めたすべての音が引き立て合っている、稀有な音源だと思ったのだ。

「作った本人としては次はどのボタンを押してなんて、あたふたとやってたことを思い出すけれど(笑)……。作業自体が私的なものだったということもあると思う。サックスもベースもドラムも演(や)りはしたけれど、いずれ別のミュージシャンに演ってもらうつもりの、デモ演奏だからリラックスしていたのは確か。ニュアンスが伝わればいいわけだから。思いつくまま自然の流れの中でヴォーカルやスキャットも入れたわ。それが出来上がってみたら、結構良いじゃないと。それでもプロのミュージシャンに聴かせることは出来るというレベルだったけれど。私の視覚的発想、アイデアをそのまま形にしたらこうなりました、という親密感のある個人的な作業だったからこそ、皆さん一層寄り添って音楽を聴いてくれるのかな、シンプルでミニマムな作り方のほうが共感してもらえるのかもね。もしかしたら、説明口調な音楽よりもいいのかもしれないとも思う」

   もう一つ特筆すべき点。それは「歌わない」歌があるということ。歌と歌の間に歌がある感じ。日本には「行間を読む」という言葉があるが、ステージを観てより強くそれを強く感じた。

「いつも若いミュージシャンに伝えたいと思っているのが、まさにそのことなの。少しでも間が空いていると落ち着かないのね、まだ入れられる、まだできると嵩に掛かるように演奏するの。音と音の間に何かあると言う、そこが重要と言っても分ってはもらえないの。ことにジャズでは顕著だと思うんだけれど、音の鳴っていない部分にこそマジックがある、本当のエネルギーがあるということから最近のJAZZはどんどん離れていってるような気がするの」

◆加藤 普(かとう・あきら)プロフィール
1949年島根県生まれ。早稲田大学中退。フリーランスのライター・編集者として多くの出版物の創刊・制作に関わる。70~80年代の代表的音楽誌・ロッキンFの創刊メンバー&副編、編集長代行。現在、新星堂フリーペーパー・DROPSのチーフ・ライター&エディター。

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