なぜ、日本のマンガはフランスで受けるのか?
いつの間に、日本のマンガはこれほどフランスの若者たちの心をとらえるようになったのか?70年代半ばに日本製アニメの放映が始まり、『グレンダイザー』、『キャンディ・キャンディ』、『ポケモン』などがヒット。90年代から日本のコミックが次々と仏訳され、あれよあれよとティーンの間で人気が広がった。大型書店には日本のマンガのコーナーが必ずあるし、地下鉄の中でコミックを読みふけるフランス人の姿をよく見かける。最近では、絵画教室でMANGA風イラストを描く小学生が増え、日本語学校は中学・高校生の生徒たちでいっぱいだという。
パリ・オペラにあるAAA学院にはマンガ家養成コースがあり、日本漫画協会の会員、吉川かおりさんが講師を務めている。本科・夜間部合わせて20名ほどの生徒が、道具の使い方、表現の基礎から始まり、ストーリー構成、キャラクターデザイン、演出、ネーム(絵コンテ)の切り方、ペン入れ(清書)まで、実際に漫画制作をしながら勉強しているのだ。マンガ人気の理由について、吉川先生は、こう分析する。
「誰もが口には出さないけれど思っていることを代弁する漫画の主人公たちと読者に仲間意識のようなものが芽生える。漫画に描かれていることは"リアル"で、現実に起こりうる出来事だったり、実際に経験したことであったり。架空の世界であっても、そこには"感情"というリアルが描かれていて、若者達はその部分に共感するのだと思います」。確かに、フランスにもマンガはあるが、ハードカバーのカラー本で、画はアート色が強く、内容もハードボイルド、SF、歴史ものが中心で、子ども、ティーンの日常を描いたものはほとんど見かけない。ただ、フランスでも、最近では、マンガ読者の趣向が多様になり、水木しげる、つげ義春、谷口ジローなど渋めの作品も読まれるようになってきているが。
前首相は漫画外交政策を盛んに推進していたが、確かにこの不況下、フランスの日本マンガ市場を見逃す手はないかも。
江草由香