草食男子時代にカツ入れる? 「オヤジアイドル」ブームの兆し

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   66歳の国民的ロックン・ローラー、ジョニー・アリディが歌手長者番付1位となり、同い年で、グラサンに葉巻がトレードマークのロック歌手ジャック・デュトロンが17年ぶりにライブ活動を再開。元祖ちょい悪オヤジ、セルジュ・ゲンズブールの伝記映画がヒット・・。フランスでオヤジアイドルがブームの兆しをみせている。

年に1100万ユーロ稼ぐ、66歳・超国民的アイドル「ジョニー」

フランスの超国民的アイドル、ジョニー・アリディ
フランスの超国民的アイドル、ジョニー・アリディ

   日本では個人情報保護法違反で公表されなくなった、長者番付。フランスで先頃、フィガロ紙が発表した、2009年度歌手部門のナンバー・ワンは、1100万ユーロを稼ぎ出したジョニー・アリディ、66歳の現役ロックン・ローラーである。50年代末にデビューして以来、アルバムは続々とミリオンセラーを記録し、フランス国内でのアルバム総売り上げ数は6千万枚と言われている。コンサートは連日、スタジアムが満杯になり、親子で訪れるファンもいて、ジョニー人形なんてフィギュアまで売られている。テレビCM、映画にも出演し、ポートレートが有名雑誌の表紙になることも。歌手のシルヴィ・バルタン、女優ナタリー・バイとの結婚・(離婚)をはじめ、女性遍歴も華やかで、現在は32歳年下の元トップモデルの妻レティシアとの仲睦まじい様子が、週刊誌のグラビア・ネタになっている。

   そのジョニー、去年の12月に、LAの病院に入院し、重病説が流れた時には、毎晩テレビではトップ・ニュース扱いとなり、治療ミスが疑われる元主治医がファンに殴られそうになる騒ぎも。ジョニーの友人でもあるサルコジ大統領自らが、個人的にジョニーの息子と電話で話をし、病状が深刻なものではないと確認した、とわざわざ記者の前で発表するほど。齢66歳、ジョニーの超国民的アイドルぶりを顕示させる出来事であった。

音楽・酒・たばこ・グラサンがオヤジアイドルの必須アイテム?

レイバンのグラサンと葉巻がトレードマークのジャック・デュトロン

レイバンのグラサンと葉巻がトレードマークのジャック・デュトロン
伝記映画が公開中、元祖ちょい悪オヤジのゲンズブール (C)Universal Pictures International France
伝記映画が公開中、元祖ちょい悪オヤジのゲンズブール (C)Universal Pictures International France

   さて、そのジョニーと同じ、1943年生まれのロック歌手ジャック・デュトロンが、この1月に17年ぶりにライブ活動を再開。パリの5日間連続ライブはチケットがすぐにソールド・アウトになった。60~70年代にフレンチ・ロック界のスターとして輝いていたが、徐々に活動の場を映画界へと移し、92年にセザール主演男優賞を取るなど、映画俳優としての活躍が目立っていた。それが、往年のトレードマークだったレイバンのグラサンに銜え葉巻で、再びステージに立ち、そのちょい悪オヤジぶりがオールドファンのみならず、若い客にも受けたという。

   デュトロンと親交のあった、セルジュ・ゲンズブールは、ちょい悪オヤジの元祖ともいえる存在。91年にオヤジ盛りの63歳で亡くなってしまったが、その伝記映画が先週からフランスで公開され、話題になっている。音楽と酒とタバコと女をこよなく愛したゲンズブール。この作品でも、グラサンをかけ、フランス製たばこジタンの煙をくゆらせ、しょっちゅう酔っ払っている。また、ジュリエット・グレコ、フランス・ギャル、ブリジット・バルドー、ジェーン・バーキン等々を相手にした華やかな女性遍歴、スキャンダルが描かれていて、これは「ちょい悪」どころじゃないかも・・・。

   大人文化の国フランスで、オヤジが活躍し、人気を博すのは不思議ではない。しかし、ロック、たばこ、酒、女大好きの濃厚なオヤジアイドルが妙にもてはやさるのは、レストランやカフェ店内での喫煙が禁止され、飲酒運転の取り締まりが厳しくなり、日本同様、草食系男子が増えつつある現代への危惧感の表れ、って気がしないでもないが。

江草由香


【プロフィル】
江草由香(えぐさ ゆか)
フリー・編集ライター。96年からパリ在住。ライターとして日本のメディアに寄稿しながら、パリ発日本語フリーペーパー『ビズ』http://www.bisoupfj.comの編集長を務める。著書は芝山由美のペンネームで『夢は待ってくれるー女32才厄年 フランスに渡る』。趣味は映画観賞。

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