高品質シャツを4900円(税込み5145円)のワンプライスで売る「メーカーズシャツ鎌倉(通称・鎌倉シャツ)」(本社・神奈川県鎌倉市)が東京都心などで店舗を広げている。衣料品の「激安競争」が続く昨今では決して安くないものの、収益的にも増収増益を達成し、小売業界の数少ない勝ち組の戦列に加わった。同ブランドが大健闘する秘密に迫る。
素材は綿100%で80番手双糸以上の高級生地使用
同社が鎌倉に1号店をオープンしたのは1993年のこと。現会長の貞末良雄さん(69)は、「アイビーファッション」で一世を風靡(ふうび)したVANジャケットをはじめアパレル数社で研鑽(けんさん)を積み、「自分が欲しいシャツを手ごろな価格で買えるシャツの専門店」という夢を実現すべく、脱サラで創業したという。
一貫して守り続けているのが品質へのこだわりだ。素材は綿100%で、高級シャツの条件といわれる80番手双糸以上の高級生地を使用し、ボタンにも天然貝を使う。衣料品の激安競争を続ける大手スーパーなどは、手間のかかる縫製工程を海外に移してコストを削減するのが普通だが、同社は逆。産地における素材選びから、縫製工場への発注、小売りまですべて自社で手掛け、国内の提携工場で完成したシャツは直接店舗に納品するなど、アパレル業界に古くからある中間工程を徹底的に省くことでコストを削減した。豊富なサイズや色、デザインに応じた多くの種類を少量ずつ生産・販売する多品種少量生産を続けているのだ。
「本来はスーパーがやらなければならなかった…」
同社の店舗には09年以来、衣料品部門の立て直しに苦しむ大手百貨店やスーパーの商品担当者が続々と「偵察」に訪れており、提携の呼びかけも多い。大手スーパーの担当者は「単なる価格競争ではなく、『価格に比べて圧倒的に高品質』という付加価値を生み出す鎌倉シャツの路線こそ、本来はスーパーがやらなければならなかったことだ」と悔しがっている。
鎌倉シャツの店舗は現在、鎌倉本店、横浜ランドマーク店の神奈川県2店舗のほか、東京都内に9店舗あるが、年内には羽田空港の新ターミナルビルにもオープンする予定で、「日本に来たアジアからの観光客に『メード・イン・ジャパン』の高品質シャツをアピールしたい」(同社)と意気込んでいる。