幸田浩子の美しいソプラノに 溺れてしまいたいクリスマス

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幸田浩子
『あなたの優しい声が~イタリア&フランス・オペラ・アリア集』
COZQ-415/6(CD+DVD)
3000円
11月18日発売
コロムビアミュージックエンタテインメント


   もうクリスマス。まったく1年が早い。正直なところ、時間配分を自分で出来るのなら、気分的にはまだ夏前だ。

   年齢を重ねると年々1年が短くなるが、2008年に話題になった時間学研究者の一川誠氏の著作『大人になると、なぜ1年が短くなるのか?』によれば、体の代謝と心理的な要因だそうだ。簡単に言えば人間は代謝機能が衰えると、それに対応して心理的時間はゆっくり流れるようになると言うのだ。人の心や体は、年齢を重ねると、だんだんゆっくりと動くようになるけれど、一方実時間は変わらぬ速さで進む。だから早く感じると言うのだ。なんとなく納得してしまった。

   実は音楽も同じようなところがある。若い頃にスピード感のあるフックの効いたロックを聴いていた人間でも、歳を重ねると、以外にスタンダードや、ジャズ、クラシックなどにシフトしていく傾向がある。もちろんロックのままという人もいるけれど、この傾向は結構頻度が高いのではなかろうか。かく言う筆者も、仕事と言う事であれば別だが、目の前に二者択一でロックとクラシックが置かれていたら、最近はとりあえずクラシックに手を伸ばしそうな気がする。

   一川氏に言を借りれば、耳から取り込む刺激も、代謝機能に釣り合った物を選ぶのではなかろうかと思う。そして音楽は、時間というただ直線的に進んでいく無機質なものに空間的な広がりや装飾を与えてくれるわけで、余計にガムシャラに突き進んでいく音より、時間を空間化して広げたり装飾を楽しめる音楽を選ぶようになるのではないかと思う。 そんな筆者にとっての、ン10回目のクリスマスに聴きたいベスト・アルバムは、幸田浩子の3rdアルバム『あなたの優しい声が~イタリア&フランス・オペラ・アリア集』となった。クリスマスのためにリリースされたアルバムではもちろんない。なぜ、勧めるのか根拠を述べろと言われると困る。

   だが、今年のクリスマスには、幸田浩子のソプラノに溺れてしまいたい気分、そういうことなのだ。美しいソプラニストの声に包まれて、今となっては単なるパーティー・デイとなった祝祭としてのクリスマスを、ちょっと味わいたい気がする、と言う事です。

加藤 晋

【あなたの優しい声が~イタリア&フランス・オペラ・アリア集  収録曲】
CD収録曲
1.歌劇≪ロメオとジュリエット≫~私は夢に生きたい(グノー)
2.歌劇≪ラクメ≫~若いインドの娘はどこへ(鐘の歌)(ドリーブ)
3.歌劇≪ホフマン物語≫~森の小鳥はあこがれを歌う(オッフェンバック)
4.歌劇≪リゴレット≫~慕わしい人の名は(ヴェルディ)
5.歌劇≪清教徒≫~あなたの優しい声が(狂乱の場)(ベッリーニ)
6.歌劇≪ランメルモールのルチア≫~あの方の声の優しい響きが~香炉がくゆり(狂乱の場)(ドニゼッティ)
7.歌劇≪ジャンニ・スキッキ≫~私の愛しいお父さま(プッチーニ)
DVD収録曲
1.歌劇≪ジャンニ・スキッキ≫~私の愛しいお父さま(プッチーニ)
2.歌劇≪ロメオとジュリエット≫~私は夢に生きたい(グノー)
幸田浩子(ソプラノ)、現田茂夫 指揮、フェラーラ市管弦楽団
録音:2009年7月10~14日、イタリア、フェラーラ市立歌劇場




◆加藤 普(かとう・あきら)プロフィール
1949年島根県生まれ。早稲田大学中退。フリーランスのライター・編集者として多くの出版物の創刊・制作に関わる。70~80年代の代表的音楽誌・ロッキンFの創刊メンバー&副編、編集長代行。現在、新星堂フリーペーパー・DROPSのチーフ・ライター&エディター。

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