事実婚カップルにも、結婚した場合とほぼ同等の法的権利を授ける制度、PACS(連帯市民協約)が、2009年10月で制定10年を迎えた。同性間の結婚が認められていないフランスで、当初は同性愛者のための制度とみなされ、実際、PACS利用者の47%が同性愛カップルで占められたが、現在では男女のカップルが95%近くに上り、08年にはPACSは百万組の大台に乗った。「結婚という因習から解放された自由な立場でいたい、でも、社会的にパートナーとして認められたいし、財産権や税制上の優遇措置の恩恵にも与かりたい」と考える人が増えているようだ。
出会いサイトで結婚にいたる例も
PACS、結婚のどちらの形態をとるにせよ、フランス人にとってパートナー探し、いわゆる婚活は日本人より切実な問題かもしれない。というのも欧米はカップル社会なので、パーティなども夫婦あるいは恋人同伴で出席するのが基本、旅行もカップルか家族で出かけるのが普通だ。たまに若者が一人あるいは同性の友人たちと旅行する姿は見られるが、日本のような熟年女性のみのグループ旅行は滅多にない。特にフランスではヴァカンスの時期にパートナーがいないと、肩身の狭い思いをするのだ。
さて、フランス人の婚活であるが、趣味のサークルに参加する、友人同士の集まるパーティに出席する、ディスコに踊りに行くなど、日本でもありがちな方法の他に、よく利用されるのが「出会い」サイトだ。日本で、「出会い系」というとイメージがよくないが、フランスではサイトを通じて知り合い、PACSや結婚にいたるカップルが少なくないらしい。たいていは登録制で、居住地域と年齢カテゴリー(「75歳~」のカテゴリーも)で検索すると、該当する登録者の職業・年齢の他、長所、趣味、相手に望むことなどが盛り込まれた自己PR文が閲覧でき、気に入ったプロフィールが見つかれば、コンタクトする、というしくみだ。
一度、サイトで出会った相手と結婚した子持ちバツイチの40代女性に話を聞いたことがあるが、男性の少ない職場で、また、小学生の息子がいるため、アフター5の外出もままならず、サイトでパートナー探しを始めたという。彼とはまず職場近くのカフェで待ち合わせ、デートを重ね、子どもを紹介し、幸せな結婚に至ったそうだ。ちなみに彼以外にも二人の男性とアポを取ったが、いずれも真剣にパートナーを探している様子だったらしい。
婚活力=自己PR力
実はフランスでは出会いサイトが生まれる以前から、無料情報紙の個人広告でパートナーを探す人が少なくなかった。パン屋の店先や駅構内に置いてある無料情報誌紙上の「求む、ベビーシッター」、「自転車売ります」なんて広告に混じって、パートナー募集広告が掲載されているのだ。それで、サイトを利用したパートナー探しにも抵抗のない人が多いのだろう、きっと。
さて、サイトや情報紙に載る、婚活の自己PR文たるや、「男性39歳 大企業の管理職。長身、ハンサムで知的、行動的、笑顔が魅力的。結婚を前提に付き合える28-35歳の美しく教養ある女性求む」、「女性57歳 離婚歴あり。見かけも心も若く、スリムでエレガントで知性あふれる、美しいブロンドの持ち主。50-65歳の知的で優しく感じのいい男性を希望」、「男性78歳 夏空のような深い青色の瞳を持ち、いまなお魅力的、趣味はピアノを弾くこと、オペラ鑑賞、読書、旅行。65-75歳のセクシーで気配りのできる女性求む」などの文句が並ぶ。言ってなんぼ、の国民性、婚活力=自己アピール力なのだ。
江草由香