松本清張生誕100年
『週刊 松本清張』編集長、郷原宏さんに聞く(下)
「清張は自分に厳しく、読者に誠実な作家だった」

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郷原さん 郷原宏/プロフィール
詩人、文芸評論家。早稲田大学政治経済学部卒業。読売新聞社を経て、文筆業に就く。74年、詩集「カナンまで」でH氏賞、83年、評論『詩人の妻——高村智恵子ノート』でサントリー学芸賞、『松本清張辞典決定版』で日本推理作家協会賞を受賞。研究誌や雑誌等での清張作品論の発表や対談、清張についての講演も多い。11月、双葉社より『評伝 松本清張とその時代』を刊行予定。

松本清張は、純文学、推理小説、時代小説、歴史小説、ノンフィクション、古代史論にまたがる領域で、質量ともに他者の追随を許さない業績を遺した偉大な作家です。しかし、作家として愛されることの多い割に理解されることの少ない作家だと思います。

これが、私が『松本清張事典決定版』を作ろうと思ったきっかけです。清張が亡くなったあと、たくさんの清張論が発表されましたが、「木を見て森を見ず」と思わざるを得ないものが多かった。清張は社会派推理小説、古代史ミステリー、戦後史ノンフィクションの創始者であり、第一人者、最初に手をつけたフロンティアといえます。古代史マニアの人は、古代史ミステリーは読むけれども名作の多い女性ミステリーを読んでいない。研究論文を見ても清張の全身が見えていない論が多かった。それで清張を理解する基礎資料を作ろうと思い立ったのです。同書は、作品事典、人名事典、地名事典、年譜、書誌、研究文献一覧で構成し、2005年に角川書店から出版されました。

その原動力は、清張作品への畏敬の思いです。この面白さはどこから来るものなのか。文芸評論家、ミステリー評論家という看板を背負っていることもあり、書誌データをきちんとしておきたかった。そのうえで、全体象をとらえた清張論を書こうと思いました。この事典のための資料探索で全国を駆け回ったときは、清張番だった当時と同じ勤勉な編集者であろうと努め、執筆にあたっては一ファンだった頃の感覚を大切にしようと心がけて10年。完成したのは63歳でした。嬉しかったですね。

そのスタンスで、『週刊 松本清張』に「人間・松本清張」の評伝を書き、清張作品を解説した「清張作品事典」を付けてあります。また、「作品その後」で映像化、舞台化のエピソードを掘り起こしています。
今年48年ぶりに「ゼロの焦点」が映画化されますが、このシーンを撮りたいと思わせる映画人を刺激する要素が清張作品にはたくさんあります。それはひと言で言えば「作品の力」です。小説は時代とともに古くなっていくのですが、人間がきちんと描けているとそこは古びない。

週刊 松本清張郷原編集長が10年かけて完成させた『松本清張事典決定版』

清張が亡くなって17年。新刊書店の文庫の棚に1メートルくらい清張作品が並んでいる。これはすごいことです。今という時代もなぜ清張が魅力なのか。それは、清張が作家になった昭和30年代、時代は戦後から10年経ち、経済復興を遂げつつあっても過渡期だから先は見えない状況でした。現代も先が見えないということでは同じで、日本人の心理状態は変わらないのではないでしょうか。清張作品には古典的な価値があります。これから50年経っても読む人がいて、夏目漱石や森鴎外と同じところにいく本物の文学であると、私は思います。

清張は自己模倣の少ないオリジナリティを大切にした作家です。400篇を超える小説に、同一主人公のシリーズものはありません。唯一、『点と線』の三原紀一・鳥飼重太郎コンビが再登場する『時間の習俗』があるだけです。自分に厳しく、読者に誠実な作家でした。森村誠一が「人間清張は好きになれないけれど、作品は大好きです。作家は作品で評価されるべき」と言っていましたが、私も同感です。

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週刊「松本清張」2 「砂の器」
「週刊 松本清張」第2号『砂の器』

発行所 (株)デアゴスティーニ・ジャパン
編集協力 (株)ジェイ・キャスト
A4変型判(32ページ)
商品番号 K010

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ごうはら・ひろし

1942年、島根県生まれ。詩人、文芸評論家。早稲田大学政治経済学部を卒業後、読売新聞社に入社。新聞記者、出版局編集者を経て、文筆業に就く。74年、詩集「カナンまで」でH氏賞、83年、評論『詩人の妻――高村智恵子ノート』でサントリー学芸賞を受賞。主な著書に『松本清張辞典決定版』『立原道造』『わが愛の譜-滝廉太郎物語』『詩のある風景』などがある。松本清張記念館発行の「松本清張研究」および雑誌等で、清張作品論の発表や対談を行う一方、清張について講演することも多い。11月、双葉社より『評伝 松本清張とその時代』を刊行予定。

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