「アコーディオンを抱えたシンデレラ」 中山うり、愛機との出会いを語る

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   「中山うり」というシンガーソングライターがいる。一風変わった名前もさることながら、ジャズやタンゴなどの要素を取り入れた楽曲、そしてなにより、アコーディオンで弾き語りをするという唯一無二のスタイルで、「アコーディオンを抱えたシンデレラ」と呼ばれることも。今回はそんな中山さんに、2009年9月に発売された新曲や、「愛機」との出会いについて話を聞いた。

「いい意味で一番ポップ」な新曲

中山うりさん
中山うりさん

――新曲『ワンダフル』ができた経緯について教えてください。

中山「昨年出したフルアルバム『ケセラ』である程度満足感はあったのですが、また一息ついて、新しく中山うりをリセットしようと思って気合い入れて作った第一作が『ワンダフル』です。その後にもたくさん書いたんですけど、これがいい意味で一番ポップでした」

――今まで、ファンタジックでシュールな歌詞が多かった中山さんですが、今回の「ワンダフル」では、長電話が楽しいとか、1人で映画を観て泣いたとか、ほのぼのとした日常を描いた内容になっています。心境の変化があったのですか?

中山「前のフルアルバム『ケセラ』のころから、ファンタジックな部分だけでなく、本音の部分を出していきたいなというのはありました。今回の『ワンダフル』では、なるべく、身近な小さな幸せをピックアップしてみました。聴いた人が自分のまわりの小さな幸せに気付くきっかけになったら嬉しいです。」

「自分に合うキーの曲がなかった」

9月に発売された新曲「ワンダフル」
9月に発売された新曲「ワンダフル」

――そもそも歌うようになったのはいつからですか?

中山「美容師として働くようになった20歳くらいからですね。仕事が辛くて、悩みが多く、はき出す場が欲しかったのだと思います。最初は近所の知人にピアノを弾いてもらって歌っていました」

―その当時からオリジナルを歌っていたのですか?

中山「最初は矢野顕子さんのカバーなんかをやっていたのですが、すぐオリジナルをやりだしました。例えば、カラオケに行っても声が低いので自分に合うキーの曲がないことが多いんです。だったら自分の欲求を満たせる曲を自分で作ってしまおうと。それで始めました」

フランスで出会ったアコーディオン

――アコーディオンを使うようになったきっかけはありますか?

中山「学生時代パリに旅行にいったとき、地下鉄の中でミュージシャンが弾いていたのを見て『持ち運びができてお手軽で、こんなにオーケストラ的な音が出るんだ』とずっと印象に残っていました。そのあと、歌うようになってから、自分1人で歌も伴奏もできればと思ったときもパリの(地下鉄の中の)ことを思い出したのですが・・・。そういえばアコーディオンで弾き語りって、他にやってる人いないなと」

――ドイツのヘスミューラー製のものを使ってましたよね

中山「アコーディオン奏者のcobaさんのお父さんがやっている店で買いました。これは20万しないくらいです。何の知識もなしに、弾き語りをしたいと伝えたら『これしかないよ! この値段でこの音色が出るのは他にないから!』と言われて、それからずっと使ってます」

――アコーディオンの面白さってなんでしょう?

中山「自由に音を膨らませたりできることですかね。ギターだったらまず『ジャーン』って弾いちゃえば音が減っていくんですけど、アコーディオンは小さいところから大きくすることができたりと、人間の呼吸のように強弱をつけることができるところですね」

――でも重そうですよね。大変じゃないですか?

中山「私のは特に重いんですよね。普通この鍵盤数だと7kgくらいなのですが、私のは10kgします。整体に通ってます(笑)」

「昔は『なんかやろう』としてた」

――「ミラクルボイス」と言われることもある中山さんですが、低音域が豊かでとても印象的な声をしていますよね。ご自分の声についてはどう考えていますか?

中山「歌を始めたころと比べると結構変わってきてますね。歌い方も声も。今はその変化が楽しいです。ファーストアルバム『ドレミファ』を出したときにはボイストレーニングに通ったりしていたのですが、今聴くと昔は『なんかやろう』としていましたね。そのときはそういうつもりはなかったのですが、かっこつけようとしていたというか、今の方が自然に力が抜けて歌えるようになりました。今の歌も10年後に聴いて、なんか思うのかも知れませんね」

――6月に発売されたライブDVD『ツール・ド・ケセラ2008』を観せていただきました。観客席を観ると随分幅広い年代の方がいらっしゃってますね。

中山「一回ライブ会場でアンケートを行ったのですが、『今日は娘と来ました。初めて娘と同じ歌手を好きになれてうれしいです』という声があってうれしかったことがあります。アコーディオンを使っていたり、私の書く曲がどこかノスタルジックで懐かしい雰囲気だからではないでしょうか。私より下の世代には逆に新しいと感じてもらえるかもしれません」

中山うり プロフィール

   埼玉県出身。ジャズやタンゴ、ジプシースイングなど多様な音楽を巧みに取り込んだ楽曲が特徴のシンガーソングライター。CDデビュー前の06年に、iTunes Storeで配信したアルバムがジャズ・チャートで1位を獲得し、「配信の女王」「アコーディオンを抱えたシンデレラ」の異名を持つ。以来、都内で美容師としても働きながらフジ・ロック・フェスティバルやサマーソニックといった主要な夏フェスに数多く参加している。09年9月にシングル『ワンダフル』を発売。11月25日にビルボードライブ大阪、12月15日に渋谷PARCO劇場での『ワンダフル』発売記念ワンマンLIVEを予定している。
   詳しい情報は中山うり公式HP(http://www.worldapart.co.jp/uri/)まで

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