矢沢永吉
『ROCK’N’ROLL』
GRRC-10
3000円
8月5日発売
GARURU RECORDS
70年代の初め。世間はフォーク・ブームだった。フォークの中にも叙情派やら反戦派やら、ロック的なニュアンスを持ったものやらと様々で、それはそれで歌謡曲・演歌一辺倒だった日本の音楽市場を活性化させていた。中で、ロック的なニュアンスを持ったものと言えば、60年代の中盤から後半に隆盛を極めたGSブームの流れに乗ったものだった。そんな時代をバックに、突然現れわずか2年ほど活動しただけで解散しながらも、現在まで語り継がれるロック・レジェンドこそ、キャロルだった。今にして思えば、キャロルのシンプル&ストレートなR&Rは、それ以前の日本のバンドにはない、洋楽的ノリとヴィジュアルを持っていた。だから、登場と共に熱狂的に迎え入れられたのだ、と理解していた。
先日、矢沢永吉にインタビューする機会があった。キャロルをオンタイムで聴いていた当時の筆者は、どちらかと言えばフォーク系の音を聴いていた。だが、キャロルの登場は衝撃的で、一気にR&Rが視野に入った。キャロル=矢沢永吉という方程式は当時からのもので、37年経った今でも痕跡として残るキャロルの衝撃を抱えながらのインタビューだった。 そして話し進む内に、一つだけ分ったことがあった。それは多くのファンにとっては自明のことでもあるのだろうが、矢沢永吉というアーティストが、一貫して、生き方そのものもロックだということ。破天荒に生きたというような雑駁なことではない。緻密に自分の生き方を検証しながら、常に発言し、アーティストとして作品を世に問い続けてきたということだ。ロックとは、根底に生きるということがなければならない、と筆者は思う。どう生きるかという問いかけがなければ、ロックではない。矢沢永吉にはそれが色濃くあった。
だからなのか! と合点した。キャロルの衝撃は、矢沢永吉がキャロル当時から「生きる」という命題を抱え続けていたからこそのものだったのだと。
このCDはすでに発売されて半月以上が経つ。世間的な評価も出尽くしているだろう。だから、敢えて今そうした一切に耳を塞いで筆者なりの評価を書くならば、これは名盤だ。世代を繋ぐ名盤。団塊の世代から今の10代も巻き込む力を持った名盤。
昔、矢沢永吉がこんな趣旨のことを言った。「年をとるのは細胞が老けること。魂が老けることじゃない」。これこそ矢沢がロックだと思える名言の一つ。
加藤 晋
【ROCK’N’ROLL 収録曲】
1.トレジャー・ハンター
2.コバルトの空
※ロッテ「キシリトールガム」CMソング
3.未来をかさねて
4.小悪魔ハニービー
5.KISS KISS KISS
6.Loser
※セガ ゲームソフト「龍が如く3」テーマソング
7.Sweet Rock’n’Roll
8.Lady ・バッカス
9.君と・・・
10:あの日、アイツに
11.オイ、そこのFriend
12.ひとりぼっちのハイウェイ