身近な人が性同一性障害をカミングアウトしたとき、あなたは受け入れられるだろうか――。「性同一性障害特例法」施行から5年が経過し、改めて社会的な関心を高めることを目的とした、第1回「GID(性同一性障害)シンポジウム2009」が2009年8月3日、都内で開催。満席の会場は、椿姫彩菜(モデル)さんらパネラーの話を熱心に聴いていた。
社会的な受け入れはまだ不十分
この日、司会を務めたアナウンサーの政井マヤさんは、性同一性障害(以下、GID)当事者をインタビューした経験があり、問題意識を持っている1人だ。政井さんがGIDについて、「体の性別と心の性別が一致しないために、違和感・悩みをかかえること」と説明するのをきっかけに、会は進んだ。GIDに悩み、医療機関に通うのは約7000人。ここ数年、椿姫さんなど性同一性障害を告白した人の活躍がクローズアップされている。
注目するのは、GIDに対する認識が高まっている点だ。09年に行われた調査結果(※)ではGIDの認知度は99.5%という結果が出ている。GID学会理事長・大島俊之九州国際大学教授は「認知度向上のひとつに、ドラマの影響がある」と話す。前出の調査でも、性同一性障害を知ったきっかけは、20~30代がドラマ、40~50代は報道番組からという結果となっており、特に2001年にTBS系ドラマ「3年B組金八先生」で性同一性障害の生徒が描かれていることが大きかったようだ。また、04年には「性同一性障害特例法」が施行され、戸籍上の性別を変えられるようになったことも要因だろう。
だが、社会の受け入れ体制については厳しい現状が浮き彫りになった。前出の調査では、「性同一性障害当事者を受け入れる社会になっていない」とする回答が、実に63.7%を占めている。椿姫さんは「バカにされたり、後ろ指をさされてつらかった。受け入れて欲しかった」と話し、自助・支援グループの運営メンバーである野宮亜紀さんも、「かわいそうな人、特別な人ではない。不利益はあるが、だからといって人生が不幸だというわけではない」と強く訴えた。