井上あずみ「飽きずに聴ける」  ピーターラビットの音源化  

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井上あずみ
『ピーターラビット(TM)と森の仲間たち』
OMCA-1121
2500円
7月22日発売
オーマガトキ/コロムビアミュージックエンタテインメント


   世界は音で満ち溢れている。そして愛に溢れている……。そんな思いにさせてくれる音楽というものがある。残念なことにその数は少ないのだが、時にめぐり合うことがある。

   ビアトリクス・ポターの描いたピーターラビットとなかまたちの世界が、CDになったと聞いた。『ピーターラビット(TM)と森の仲間たち』は、そんな音楽の一つだ。演奏はタマトミカ、そして歌うのは井上あずみと聞いて興味が湧いた。タマトミカはビブラフォンとピアノの女性2人組のインストグループで、08年『switch』でメジャーデビューしている。その音は暖かで美しく、心が洗われる。

   一方、歌の井上あずみは、誰でも耳にしたことのある歌を歌う女性シンガー。宮崎駿監督のアニメ映画『天空の城ラピュタ』(86年)のエンディングテーマ「君をのせて」のあの透明感のある美しい歌声の主だ。『となりのトトロ』(88年)の「さんぽ」、「となりのトトロ」、「まいご」、「おかあさん」も彼女が歌っている。本当に世界が見える歌を歌うシンガー。

「見て楽しめる音楽の原点」

井上あずみさん
井上あずみさん

   井上あずみさんと話をする機会があった。

   最近ではアニメやゲームのテーマソングをうたっている印象が強いが、元々はアイドル歌手としてのデビュー。その後、売れない時期を過ごしたが、宮崎駿監督の『天空の城ラピュタ』との出会いが彼女の運命を変えた。

「知り合いが『アニメ映画のサントラで、何人も受けたけれど決まらない』と、オーディションへの参加を薦めてくれて。ものすごく歌を歌いたかった時期で、カセットに入れた音を久石譲さん、鈴木、高畑両プロデューサーに聴いていただいたんです。その時『この娘は本当に歌手だね』と誉めてくださって。それで正式にオーディションに参加したんです。そして歌ったのが「君をのせて」だったんです」

   その後『となりのトトロ』にも参加、歌手・井上あずみという名を満天下に知らしめた。

   多くのアニメソングを歌った彼女が今回、絵本と音楽のコラボ『ピーターラビット~』を歌ったのは当然の帰結かもしれない。

「ヴィジュアルがあると、聴いて受ける印象だけでなく、違う受け取り方ができるんですね。このCDは見て楽しめる音楽の原点といっても良いかもしれません」

ピーターラビットの原画などはイギリスのライセンシングエージェントが管理している。

「ピーターラビットには、ポピュラリティのあるテーマ音楽が存在しなかったそうです。ピーターラビットの東アジアライセンシングエージェントから、ピーターラビットのテーマ曲を制作して欲しいというオファーがあったそうで、お話を聞いて是非やりたいと」

   今回のCDではピーターラビット6話分を音源化している。

   そのセレクトはピーターラビットのライセンシングエージェントが行ったが、実際の音作りは、作詞・作曲家はじめ井上さんも参加し、スタッフが議論を重ねて作り上げた。

「みんなの知恵と勇気の集大成。泣く泣く落とした曲もありますし、素敵なお話を壊さずに、聴いてくださる皆さんに届く曲をと選び抜いたものなんです。デモ作りも時間をかけました。年代を問わず聴いていただけるものにしたくて」


◆加藤 普(かとう・あきら)プロフィール
1949年島根県生まれ。早稲田大学中退。フリーランスのライター・編集者として多くの出版物の創刊・制作に関わる。70~80年代の代表的音楽誌・ロッキンFの創刊メンバー&副編、編集長代行。現在、新星堂フリーペーパー・DROPSのチーフ・ライター&エディター。

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