「ミクロソロジスト」がつくるカクテル
アンティークの電話ボックスにかかった受話器で話すと中からドアを開けてくれる(「PDT」)
外はパンクファッションの刺青の若者。中はソフィスティケートされた空間(「PDT」)
あの有名ミクソロジストのサーシャ・ペトラスキーが、マンハッタンからイーストリバーを渡ったところにあるクイーンズのロングアイランドシティに新しくオープンしたのは、過去の土地名から名づけられた「Dutch Kills」。ここも、店頭は、中にバーがあるとは想像もつかない、倉庫のドアのような入り口だ。
ブルックリンのフォートグリーンには、ガレージドアのそばについたベルを鳴らすと、のぞき穴からチェックされてからドアが開く「The Hideout」が、オープン。
あぁ!おいしいカクテルを楽しみたいだけなのに、なんでこんなややこしい段階を経なくてはいけないんだ!?どうして、客なのに、お願いして店に入れてもらわないといけないんだ!?ニューヨーカーは、こんな事をありがたがるのか?と、お思いのことでしょう。
実は、現代のスピークイージーに共通するのが、ミクロソロジストとも呼ばれる優秀なバーテンダーの作るカクテル。
レストラン「グラマシータバーン」でのバーテンダー修行時代に、シェフやペストリーシェフから学んだ料理テクニックやフレッシュなハーブやフルーツの応用など、カリナリーカクテルの代表者「PDT」のJim Meehan、6ページにも及ぶカクテルメニューのある「The Hideout」のミクソロジストのCharlotte Voiseyは、グラマシーパークホテルやロンドンのドーチェスターホテルでコンサルトしてきたベテランだ。
これらのバーには、絞りたてのフレッシュジュース、自家製のハーブなどで香りをつけた蒸留酒、氷も手で割った物が使われるのが共通している。
一過性の変わったものは飽きられるが、ドアを超えた向こうにあるおいしい物には、人々は、貪欲なのでした。
坂本真理