2009年4月8日、東京青山にあるアーキテクトカフェ青山で「アーキテクトカフェ・フレンドシップ N0.9」というトークイベントに呼ばれた。会場に集まってくれたみなさん、ありがとうございました。人前で話をするのには慣れているつもりだけれど、このカフェという距離感はけっこう不思議なものだった。
カフェで公開討論のように人々が集う
「第9回フレンドシップ」で講演する坂井さん(アーキテクトカフェ青山
1920年代、パリのカフェで文壇に限らず美術や音楽、様々な才能が交流したというのを聞くけれど、なかなかそこまで豊かな空間というのは生み出しにくいし、これだけウェブが発達した今、最先端の才能が1カ所に集うというのも日常的には考えられない。とはいえ、このアーキテクトカフェのイベントは、今の時代にカフェという空間をメディアにしていこうという姿勢を前面に見せた試みだ。カフェで公開討論のように才能を誇る人々が集う。それを観客が囲む。そうなれたら最高だ。パリではその20年代にピカソとヘミングウェイが出会ったり、話の輪がそこにできたりしていたそうだ。そんな風になれたら本当にすごいことだ。
もっとも毎晩のようにイベントを仕掛けていくのはそれだけで大変なこと。それに頻繁に使いたいお客さんにとって、イベントは余計な存在だったりもする。カフェという範囲でメディアにしていくのにはどんな手段があるのか、というのを今の時代で考えたのがインストアメディア社であり、アーキテクトカフェはそのひとつの答だ。「人が集まるところにはメディアとしての価値がある」と同社は考えている。空間をメディアとしてとらえ、積極的に活用していこうというのだ。
アーキテクトカフェはイデアやライオンなど23の住宅関係の企業とのコラボレーションで作られている。インテリアはほぼすべてこの企業群から提供してもらっている。結果、カフェというよりもう少し自宅に近い印象だ。若いカップルがリビングにこんなチェアがあったらいいね、こんなおしゃれな小物ほしいね、と話し合えるような空間。このカフェはこうした企業からの情報提供から成り立っているので、もしお客さんから質問があれば応えられるようにしている。こうして確かにカフェは、相当に確実に伝えることのできるメディアに育ちつつあるようだ。ちなみにアーキテクトカフェでは気に入った小物があったらその場で買うことができる。
特定の旅行先、目的で染めるトラベルカフェ
東京・飯田橋にある「トラベルカフェ フィリピン TOKYO」
もっとわかりやすくメディアとして成立しているのが同社の手がけるトラベルカフェだろう。ひとつのカフェの中を特定の旅行先、目的で染めていく。ポスターを置くだけではなく、内装もメニューもテーブルシートや卓上POPもカフェに流す音楽や映像も、長期ならばカフェの名前自体もそれにあわせていく。その土地に旅したくなる。そんな旅行がしてみたいと思う。押しつけではなく感じてもらうことが重要だ。
もちろんテーマは旅行でなくても成立する。新商品、新サービスにあわせての展開もすでに始めている。徹底することで効果は上がる。空間はメディアとして機能するのだ。
坂井直樹