2009年4月から放送されているアニメ「けいおん!」(TBS系)。軽音部に入った女子高生の日常をほのぼのと描いた作品なのだが、彼女たちが使っている機材はよく見ると本格的で、ネットでも「なんだ、コレ。凄いじゃん!」など驚きの書き込みが多数あった。そこで今回は、ギターを嗜む筆者が登場キャラの使用機材を推理。さて、当たっているか?
キーボードは超テクニカル志向
まずは平沢唯(ひらさわ ゆい)が使っているギターから。ヘッドのロゴから、米ギター老舗メーカー、ギブソンの「レスポール・スタンダード(チェリー・サンバースト)」モデルであることがわかる。レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジや、元ガンズ・アンド・ローゼズのスラッシュなど、ロックギタリストの間で広く使われている定番モデルで、低音が豊かに響く、甘くて太い音色が特徴だ。
ヒストリック・コレクションという高級ラインもあるが、作中では売値25万円ということだったので、恐らく通常のギブソンUSAだろう。傷などがない通常の新品の場合、大手楽器店、石橋楽器を見てみると大体23万くらいから売られていることが多いようだ。
琴吹紬(ことぶき つむぎ)が使っているキーボードは、青く光る真空管から、KORG(コルグ)の「TRITON Extreme(トライトン エクストリーム)」の76鍵だろう。「最強ミュージック・ワークステーション」としてKORGが誇る「TRITON」シリーズの04年に発売されたバージョンではないかと思われる。膨大な種類のサウンド・エフェクト類もさることながら、シンセサイザーとしては珍しい真空管を搭載したモデルで、ナチュラルで奥行きのあるアナログ的なサウンドが特徴だ。商品サイトでは、米プログレッシブ・メタルバンド、ドリームシアターのジョーダン・ルーデスのデモ演奏が聴ける。また、同じくメタル界の超絶キーボディスト、ヴィタリ・クープリも使用しているとのことで、かなりテクニカル志向の強いプロユースなモデルのようだ。現在は生産を終了しているが、一部のネットショップなどでは、22万円ほどで売られている。
あのドラマーも使用したドラムセット
次はリズム隊。ドラムの田井中律(たいなか りつ)が使用しているのは、ヤマハの「Hipgig(ヒップギグ)」(メローイエロー)というドラムセットと思われ、シンバルとハイハットはジルジャン社製とみる。
Hipgigは、スティーリー・ダンやダニー・ハサウェイといった数々の大物ミュージシャンのレコーディングに参加している、ドラマー、リック・マロッタのシグネチャーモデル。2分割できるバスドラの中に、2つのタムとスネアを収納できるという少し変わった仕様で、持ち運びが非常に容易となっている。Youtubeでは、チック・コリアの「エレクトリック・バンド」への参加で知られるジャズドラマー、デイヴ・ウェックルがこのHipgigを叩いている動画も見られ、サウンドに関しても十分プロが満足するモデルであることが分かる。
価格は、Hipgigの方は定価23万7500円だが、オンラインショップを見てみると安くて17万円くらいからの価格で販売している場合が多い。ジルジャン社製のハイハットとシンバルはアニメから型番を識別することはできなかったが、一番安いZBTシリーズだと、石橋楽器ではハイハットが約1万5000円、20インチのライドシンバルが約1万3000円といった具合だ。
少々判別が困難だったのが、秋山澪(あきやま みお)が使用しているベース・ギター。ヘッドのロゴと形状から、ノブが3つのフェンダー左利き用62年ジャズベースで、カラーは3トーン・サンバーストであることがわかる。だが、フェンダーには、本家アメリカ製のフェンダーUSAの他に、日本製のフェンダージャパンなどがあり、そのどれにあたるかは不明。価格も激しく異なり、イケベ楽器で調べてみると、通常の新品で右利きのものだと、フェンダージャパンの「JB62 (3TS)」が店頭価格大体6万4000円。フェンダーUSAの「American Vintage '62Jazz Bass 3-knob (3CS)」が約20万円となっている。
ベースの詳細なモデルが分からないものの、それ以外はいずれも20万円前後の本格的機材だ。いくらアニメとは言え、高校生でこのレベルの機材を使用できるとは羨ましい限り。音楽機材好きにはたまらない作品といったところか。
カルロス櫻井