幼いころ誰もが使ったことのあるクレヨンや色鉛筆。そこで、ひっそりと大きな変化が起きていたのをご存知だろうか。かつてあった「はだ色」が姿を消してしまったのだ。どうなっているのだろう。メーカーに聞いてみた。
呼称変更「10年前」から!
「はだ色」は何処に…
「クレヨンから『はだ色』がなくなったのは99年からです」
大手クレヨンメーカー、ぺんてるの広報担当者はこう話す。ぺんてるでは99年以降、「はだ色」の呼称を「うすいオレンジ」を意味する「ペールオレンジ」に改めている。変更理由に関しては、
「絵を描く際には見たままの色で描くのが基本です。『はだ色』というのは、メーカー側が肌の色とはこういうものだという概念を与えてしまうので、不適切だと判断しました」
と話す。同じくサクラクレパスも00年から「はだ色」の呼称を「うすだいだい」に変更。やはり「肌の色に対して固定観念を与えてしまうから」だという。日本絵具クレヨン工業組合によると、05~06年にはほぼ全てのクレヨンから「はだ色」という呼称が消えたとのことだ。
「はだ色」は人種差別に繋がる
色鉛筆の方も同様だ。トンボ鉛筆では、01年から「はだ色」の呼称を「ペールオレンジ」に改めている。同社広報部は、
「呼称変更の理由には、それ以前から先生方から『はだ色』を使っての教育がしづらくなったという声が上がっていたということがあります。日本には現在、アジア諸国から多くの方々が働きにやってきており、さまざまな肌の人が社会にいるアメリカのような状況になってきています。学校で『はだ色』を使用する際、日本で教育を受ける外国の子どもが自分の肌と違うと感じるのは好ましくないと判断しました」
と話す。
ぺんてるが呼称変更に踏み切ったのを受け、トンボ鉛筆、サクラクレパス、三菱鉛筆の大手文具メーカー3社が00年に協議。それぞれ呼称変更へと動いたわけだが、語られた理由の根底に共通してあるのは、人種差別的なものへの配慮であるように思われる。
だが一方で、呼称変更に反対の声もあった。呼称変更により、混乱を招くのではといった意見のほか、「はだ色」というのは、日本人が何千年もかけて理想の肌の色として育ててきた概念なので、文化として守っていかなければならないという主張があったとのことだ。確かに、長年慣れ親しんだ「はだ色」が消えるのは少し寂しい気もするが、「差別」というものに敏感な今の世の中にあっては、仕方のないことなのだろう。
カルロス櫻井