ターゲットはまず日本だけ 最も小さなダイソン DC26

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   4月10日、ダイソンから今までで最も小さなダイソンの掃除機が登場する。「DC26」。最初から日本市場だけをターゲットにしたと言い切っての商品だ。本体の重さが3.32kg。ハンディタイプを除き、過去のダイソンの本体の重さは一番軽くて4.8kg。1.5kgも小さい機種だ。軽さこそ最重要課題だ、として軽く小さくしても機能は落とさないことが必要条件という、きつい開発がようやく実を結んだわけだ。

軽く小さくしながら性能も保つ

コンパクトになった「DC26」
コンパクトになった「DC26」
新商品を手にしたジェームズ・ダイソン氏。手応えも十分だろう
新商品を手にしたジェームズ・ダイソン氏。手応えも十分だろう

   今日に至る10年間、ダイソンの商品開発は日本の家庭環境を考えておこなわれてきた。2001年には僕の友人でもある和田浩子さんがダイソン日本支社の代表取締役社長となった。和田さんは日本の消費者がいかに賢く、商品をよく理解し、その上でどう商品を判断するかをジェームズ・ダイソン氏に熱心に話したに違いない。4.8kgの掃除機を持ち歩いての掃除はできない。小柄な和田さんが言ったらダイソン氏も納得したことだろう。

   ダイソンの機能については多くの日本人がすでにその優位性を理解していると思うけれど、いざ買うとなるとそこまでの必要は感じないという人が多かった。そこで注目したのが小さなほこりやアレルギーを引き起こす物質も逃がさないというルートサイクロンテクノロジーを核にした技術だ。ここからアレルギーに悩まされる人、ペットを室内で飼っている人など、ターゲットを明確にした商品が作られた。自分のためにそれが必要、ペットと暮らすにはこれが必要、そう思った人をまずダイソンのユーザーにする。これはそれなりに効果があり、機能が納得感になり初期の市場拡大につながった。しかし、最後の関門は十分に軽く小さいことだ。

   ダイソンはこうして日本だけが市場だと言いつつ、軽く小さくしながら性能を保ったままの機種を誕生させた。最初に日本がこれをどう評価するかが大きいのは間違いない。しかし小さく便利なものであればやがて世界でも評価されるのもまた確かだ。

   ダイソンに来る前に和田さんはP&Gに在職していた。そこでも日本の消費者がいかに商品情報をきっちり理解し、細かい商品の差を見極めることができるかを世界企業に対して説いていた。実際、P&Gの様々な商品の最初の市場として日本が利用され、そこで消費者の使い方や効果的な表現が発見された。そしてそれが世界市場に向かって展開された。人材育成という見地で書かれているが、この辺の事情については和田さんの著書「P&G式世界が欲しがる人材の育て方」(ダイヤモンド社)が参考になると思う。

   実は僕の職場にある掃除機もダイソンだ。機種はDC05。これは10kgほどの重さがあって、しかもそれなりに大きい。男性スタッフでも階段の上り下りに苦労する存在だ。しかし使い始めて7年経つけれど、まったく機能に変化がないのは事実。この技術については驚くしかない。




◆坂井 直樹 プロフィル

坂井直樹氏
ウォーターデザインスコープ代表/コンセプター。慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科教授。1947年京都市出身。京都市芸術大学デザイン科入学後、渡米。サンフランシスコでTattoo Companyを設立。ヒッピー達とTattooT-shirtを売り、大当たりする。帰国後、ウォータースタジオを設立し、日産「Be-1」「PAO」のヒット商品を世に送りだし、フューチャーレトロブームを創出した。2004年デザイン会社、ウォーターデザインスコープ社を設立し、ケイタイを初めとした数々のプロダクトを手がける。現在auの外部デザイン・ディレクター。07年9月、新メディアサイト「emo-TV」を立ち上げる。同年12月には、日常の出来事をきっかけにデザインの思想やビジネスコンセプトを書きつづった「デザインの深読み」(トランスワールドジャパン刊)を著した。

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