「ブックカフェ」が増加している。カフェスペースを設けた書店や数多くの本を並べた喫茶店など形態はさまざまだが、中でも特に注目を集めているのが「絵本喫茶」。いくつかの店を紹介しながら、人気の秘密を探ることにする。
扉の向こうはまさに「物語の世界」
落ち着いた雰囲気が漂う「マ・プレフェレ」
まずは、東京・銀座に2008年11月オープンした「Ma preferee(マ・プレフェレ)」をのぞいてみる。
銀の燭台が並べられた長テーブルと、その左右にずらりと並ぶ本棚。店内は「お屋敷の図書館」をイメージしたという中世ヨーロッパ風の装いをしている。
蔵書は約2000冊あるが、中でも力を入れているのは、絵が飛び出すなどの工夫が凝らされた「仕掛け絵本」。その数は全体の半数に当たる約1000冊で、迫力のある動きや複雑な構造が多くの人々を魅了中だ。この「仕掛け絵本」の影響もあってか、女性ばかりではなく、客の3割を男性が占めているといい、また「翻訳本に比べ印刷がきれいだから」との理由で原書を希望する客も少なくないそう。
絵本を読みながら食べる、「オズのティータイム」や「アリスのお茶会」など絵本をモチーフにしたカフェメニューも楽しいと評判になっている。
「文字を超えたもの」としての絵本
「絵本=アート」をより強く感じさせるのは、東京・目白にある洋書絵本を専門に扱う書店「Book&Cafe EHON HOUSE Mejiro」。
同店は輸入絵本・雑貨を扱う「絵本の家」の直営店で、「じっくり絵本を選んでもらえるように」とカフェスペースを併設している。
店内には世界30か国以上から集められた4000冊以上の外国語絵本が並ぶ。日本語の絵本もないわけではないが、その扱いはあくまで30か国のうちの1国に過ぎない。
もちろん、客のすべてがこうした外国語にたん能なわけではない。しかし、絵が主体であることから全く理解ができないわけではないし、日本語の解説がついた絵本や、仕掛け絵本を置くなど店側の工夫によって、「文字を超えたもの」として楽しまれているのだという。
こうした珍しい店だけに、遠方から訪れる人、プレゼントを買いに来る人、語学学習の足がかりにする人など、色々な客が訪れているようだ。
また、同店は洋書絵本に親しんでもらおうと、洋書絵本の読み聞かせなど、絵本に関連したカルチャー講座も定期的に開催しており、文化発信地としても機能している。
子供がゆっくり絵本を読めるのが「基本」
自宅にいるような家庭的ムードが「絵本カフェholo holo」の売り
「絵本喫茶というと、大人中心のところが多いですから、お子さんにゆっくり絵本を読んでいただければうれしいですね」
と語るのは、大阪・難波中に2008年7月にオープンした「絵本カフェholo holo」。
「お菓子はすべて手作り」
「コーヒーは注文が入ってから挽き始める」
同店は家庭的な雰囲気に満ちており、子供たちが楽しそうにしている様子がたびたびブログにアップされている。
子供連れ以外で多いのはやはり女性。子供のころに読んだ本を眺め、「懐かしい」「いま読むと違った感じを受ける」などの感想を残している。
また、栃木・那須烏山にあり、木の温もりを感じる2階建ての店「絵本喫茶ぱたぽん」は、親子連れを意識した店作りが特徴。
階段に柵(さく)がついていたり、トイレにおむつ替えシートが備えてあったりと、安心して子供を連れて来られるよう配慮がなされているため、乳幼児を連れた母親たちも多く訪れる。ランチメニューには子供用のセットもあるのだとか。
絵本の読み聞かせ、昼食・お茶会といった「定番コース」を過ごしながら、母親たちが交流を深める場にもなっているそうだ。
読む場所だって
インターネットで絵本を販売する「絵本ナビShop」によると、日本では絵本を子供の教育用としてとらえる傾向が強かったが、ここ数年、癒しやアートとして見直されるようになり、女性を中心に懐かしさや新鮮な気持ちを持って絵本に触れる大人が増えているのだという。
以上の点から考えるに、「絵本喫茶」人気の背景には、子供はもちろん大人も楽しめるという要素があるようだ。
また、それぞれの店が独自の雰囲気作りを実践している点も見逃せない。